新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言の延長に伴い、プロ野球の開幕がなかなか見通せない状況が続いている。5月11日には、7月に予定されていたオールスター(球宴)の中止が発表された。1951年の開始以来、70回目にして初の中止となる。

ペナントレースは6月中旬以降の開幕を目指す方針だが、その決定も先送りされた。他のプロスポーツ界も「開幕」が見えないままにリスケを繰り返している。どのプロスポーツも経済的にも逼迫し、危機感は深まっている。

NPB(日本プロ野球)はファン拡大のためのマーケティング戦略が成功を収め、観客動員は2019年には2653万人余と史上最高を記録した。1試合平均で3万人を動員する計算になる。

NPBの各球団は本拠地周辺の狭いエリアの顧客に対して濃密なマーケティングを実施して、熱心なリピーターを獲得した。コアな顧客はファンクラブに入り、年に何試合も球場に駆け付けた。そして球場では、応援リーダーを中心に密集して座り、味方の攻撃中は大声で応援した。客席では飲食も楽しむ。またグッズも買い込んだ。こういう観戦スタイルが定着し、本拠地球場での試合は、莫大な収益を上げるようになった。

昭和の時代、プロ野球は巨人戦を中心とした「放映権」が主たる収益源であり、巨人戦がないパ・リーグは親会社の赤字補填に依存していた。それが21世紀に入ってビジネスモデルが一変、テレビ中継は激減した。プロ野球は入場料収入、球場での物販、さらには球場のスポンサー収入を収益の柱とするようになったのだ。

プロ野球のビジネスモデルに崩壊の恐れ

しかしこのビジネスモデルは今回の「新型コロナ禍」によって一気に崩壊する恐れがある。新型コロナウイルスには季節性があり、紫外線が強くなり湿度が高まる夏季には勢いが衰えるとする研究もあるが、ウイルスが死滅するのではなく、夏季でも感染のリスクが残る。また秋が来れば、再び感染が広がる可能性が高い。

1918年、北米に端を発した「スペイン風邪」は、1920年まで続いた。MLBでも審判などに死者が出たし、ベーブ・ルースも罹患したと言われる。

その前例に鑑みれば、日本政府が想定している経済の「V字回復」は望むべくもない。

プロ野球は遅ればせながらシーズンを開幕することができたとしても、当面はこれまでのような観客動員は難しいだろう。超満員の観客が大声を出し、飲食をするスタジアムは、それだけでメガクラスターになりかねない。当面は、観客動員を制限するとともに、応援も抑制せざるをえなくなるだろう。