政府が旗を振れども、なかなか前に進まない「地方創生」。ところが、コンサルティング大手、アクセンチュアの江川昌史社長は、近著『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(藤井篤之氏との共著)のなかで、人口減少と高齢化に苦しんでいる地方部にいま「一筋の光明が差している」と指摘する。

ポスト・コロナの時代に、地方創生のあり方にどんな変化があり、地方はそのチャンスをどう生かしたらいいのか、「『東京で働く』しか頭にない人が気づかない視点」(2020年7月2日配信)に続いて、この本から抜粋・再編集し、お届けする。

テクノロジーの活用は地方創生を考えるうえで、もはや必須要素だ。地方創生に本気で取り組む人は、強いパッションや、やり遂げる胆力、周りを巻き込みながらコラボレーションする力などに加えて、最低限のテクノロジー知識、あるいはテクノロジーに対する高い感度が求められる。

本稿では主に、地方創生に関してヒントになりそうなテクノロジー要素をいくつかピックアップし、国内外における事例と合わせて解説していきたい。

例えばAI(人工知能)がブームになって久しい。ガートナー社が発表した日本における各テクノロジーの成熟度、採用度、適用度などをまとめた『日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年』によると、AIはようやく「過度な期待のピーク」を脱し、地に足のついた実用化や採用のフェーズに向かうことが予想されている。

重要なのは、AIの技術を活用して実際にどのようなことが実現できるようになっているかだ。事例を通じて見ていこう。

人に代わってイチゴを収穫するロボット

AIの専門家に話を聞くと、AIがここ数年飛躍的に進化した理由の1つが、センシング技術の発達である。これによってAIは、いわば目を持ち、これまで以上にさまざまな画像・映像データを、イメージセンサーなどを通じて取得し、処理できるようになった。こうした技術を活用して、例えば、アメリカで2013年に創業したハーベスト・CROO・ロボティクスでは、人に代わってイチゴを収穫するロボットを開発している。

イチゴ狩りのイメージもあってか、イチゴというとハウス栽培を思い浮かべる人が多いが、アメリカで栽培されるイチゴの多くは路地栽培だ。柔らかくて小さなイチゴの実は採取が難しく、小さな子どもがイチゴをとろうとすると、強く握って潰してしまったり、まだ完全に赤くなっていないイチゴを採ってしまったりする。

そのため、従来、採取作業を担ってきたのは大人の労働者だった。しかし近年アメリカでは、移民規制などの影響もあって季節労働者が減り、さらに労働コストも上昇している。