「運動はしていないけれど、暑くてよく汗をかいているから代謝はいいはず」――本当にそうでしょうか? 内科・循環器科の専門医である池谷敏郎氏(近著に『代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』がある)が、病気予防・肥満解消につながる「代謝の重要知識」を解説します。

代謝の良しあしと言えば、「汗をかきやすい人は代謝がいい」「体温の高い人は代謝がいい」と、よく言われます。なんとなくそう思っている人は多いかもしれませんが、はたしてそうでしょうか。

例えば、太っていて汗っかきの人がいますよね。そういう人は代謝がいいのかと言えば、むしろ代謝のオーバーヒート(代謝のシステムがうまく回らなくなり、あふれ出た脂肪が異常なところにたまり始めたり、さまざまな害を及ぼす物質を出し始めたりする)を起こしている可能性が高いでしょう。逆に、汗をかきにくい人でも、運動習慣があれば代謝がうまく回っている場合もあります。

運動をして体が温まって汗をたっぷりかくと、スッキリするものです。「あー、よく代謝したな! 脂肪を燃やしたな!」という充実感があるかもしれません。たしかに、体内に備蓄していた分を燃やしてエネルギーをたくさん使ったことは、そのとおりです。でも、1週間に2、3回汗をかくだけで、たまりにたまった備蓄分がすべて解消されるわけではありません。

代謝は「汗のかきやすさ」「体温の高さ」ではない

体温についても、太っている人は発汗による体温調節機能が低下しているので、脂肪が体温を維持することによってむしろ平熱が高くなることもあります。そう考えると、汗のかきやすさや体温の高さで代謝の良しあしは語れません。

大事な視点は、やっぱり代謝がオーバーヒートを起こしているかどうか。つまりは、食事で摂って蓄えるエネルギーと、基礎代謝や活動代謝、食事代謝で消費するエネルギーとのバランスが取れているかどうか、です。

例えば、スポーツ選手で現役引退後に太る人って多いですよね。現役時代には食べる量も多いけれど筋肉質で基礎代謝や活動代謝も高く、釣り合いが取れていたのが、引退すると運動量が減り筋肉量も少なくなることから、食べる量に対して消費するカロリーが不足して代謝がオーバーヒートしてくるのです。

現役の力士は、内臓脂肪は少なく、大部分は皮下脂肪です。ただ、過酷な運動を行うことで、ギリギリのところでバランスを取っているので、実はゆくゆく糖尿病になる人がとても多いのです。一般の人も、例えば、部活に励んでいた若い頃と同じように食べていたら、すぐにオーバーヒートしてしまいます。