つまり、そうした信念が貫かれているからこそ、GAFAほど知名度があるわけでもなく、店舗もなく、消費者と直接関わることがないにもかかわらず、セールスフォースは成功できたのだろう。

知名度が低いのであれば、「なんとかして知ってもらおう」と、信頼してもらうための努力を重ねてきたということだ。

こうしたところからも推測できるように、「信頼」に対する配慮の大きさはセールスフォースの、そしてベニオフの思想を理解するうえで重要なカギとなる。

私たちが提供しているのは、一般向けのクラウドサービスだ。顧客の財務データや見込み客の情報だけでなく、顧客の顧客に関する大量の機密データも保護するとなれば、私たちを信頼してもらわなければならない。(70ページより)

自分がどこにいて、誰に見られていて、どんなことを期待されているか。そんな、当たり前のように思えることを、ベニオフはつねに意識しているように思える。だからこそ、失敗からも学びを得ることができるのだ。

そのいい例が、ツイッター買収の失敗だ。当初、彼は直感を信じてツイッターを買収すべきだと確信した。自身の中でそれは“手堅い投資案件”だったが、同僚、取締役、投資家など多くの人たちから反対されていることを身をもって感じ、最終的にはこの話を取り消し、謝罪をする。

自分の勘を信じるよりも信頼が大切だった

自分の勘を信じる必要性よりも、信頼を勝ち取ることのほうが大切だという思いがあったからだった。しかしこの“つまずき”も、結果的には学びの機会となったようだ。

つまずくことの良い点は(比喩的にも、この場合は文字どおりの意味でも)、常に洞察が得られることだ。ツイッターの一件で学んだのは、信頼にはさまざまなタイプがあり、時にはその間でせめぎ合いが起こるということだ。どんなビジネスであろうとも、そのせめぎ合いを乗り越え、もっと強くなれるかどうかで、リーダーとしての真価が試される。(85ページより)

ベニオフは定期的に、サンフランシスコの自宅に起業家を招いて食事会を開いているそうだ。そのことに関し、スタートアップ企業の若手CEOと話し込んだときのエピソードが紹介されている。