9月19日から観客数の上限が緩和されたが、興行収益的にはNPB各球団は大きなダメージを被っている。球団によっては売り上げが8割減になったという報道もある。

球場内の物販収入も含め、売り上げの大幅ダウンは避けられないところだ。このままいけば入場料の値上げも不可避だろう。さらに野球中継の視聴率も落ちている。来年以降の放映権収入にも影響が出そうだ。

こうした状況下、今季もそろそろ「FA」の話題がメディアで取り上げられるようになった。今季は、ヤクルトの山田哲人、中日の大野雄大、西武の増田達至が「FAの目玉」とされている。しかし球団の経営が厳しさを増す中、各球団が巨額のFA資金を用意するかどうかは予断を許さない。

FAはMLBに倣って導入されたが、日本独特の「FA宣言」という制度によって有名無実化している。選手の職業選択の自由を担保するため、という本来の趣旨が損なわれている。コロナ禍によって、FA制度はさらに形骸化するのではないか。

日本プロ野球の「限界」

こうした問題を正面からとらえた著書が刊行された。中島大輔の『プロ野球 FA宣言の闇』だ。この本は、日本にFA制度が導入された経緯や、それがどのように変化していったかを追いかけている。

日本特有の制度である「FA宣言」が、本来独立した事業者である選手を球団の支配下につなぎとめる「保留制度」との兼ね合いで生まれ、その背景には、自社の目先の利益を声高に叫ぶ一部球団の専横があるという。

その対比として、若いころから野球に専心し、世の中の常識をほとんど会得しないままに、「個人事業主」になった選手の存在があることを浮き彫りにしている。

一方でパ・リーグを中心に、NPB全体のことも視野に入れて改革を進めた球団があったことで、プロ野球は21世紀以降、観客動員が大幅に増加し、収益構造が改善された。しかし、FA宣言に象徴されるように野球界の体質そのものはあまり変わっていない。

MLBでは、選手本人が契約書を隅々まで読み込む。そのうえで腕利きの代理人が加わって球団側と契約交渉をするが、NPBでは多くの選手が入団時に球団とかわす「統一契約書」でさえもほとんど読んでいない始末だ。

この本は、NPBという組織が「制度疲労」を起こし、ポストコロナの新しい時代に対応する能力に疑問符が付くこと。そして選手の意識も高いとは言えないことを端的に表している。