インフルエンザ予防接種の受付が始まって半月が経過した。昨年末から年初にかけてはインフルエンザが流行らなかったが、もしこの冬にインフルエンザの感染が拡大したら、発熱などの初期症状は新型コロナウイルス感染症と区別がつきにくい。医療機関からは「パニックになるのでは」といった不安の声が上がり、インフルエンザの予防接種を推奨する医師は多い。一方で、一般の人からは「予防接種をしてもインフルエンザにかかった。意味があるのか」などという不満の声も耳にする。

そもそも予防接種とは、ワクチンとは何なのか。体に何を起こすものなのか。

ハーバード大学やソルボンヌ大学、日本では東京大学などで最先端の医学研究を行いつつ、その成果をいち早く診療に生かしている医師、根来秀行氏の新刊『ウイルスから体を守る』から一部を抜粋、再構成してお届けする。

予防接種を受けると体には何が起こるか

日本人の多くは幼少期からさまざまな予防接種を受けています。1度受ければ終わりのものもあれば何度も受けるものもあり、受けると特定の病気にかかりにくくなることはよく知られていますが、そのとき何が体に起きるのでしょうか。

ごく簡単に言うとすると「体に入ったウイルスを倒す準備を整える」となります。たとえば、はしかや風疹に1度かかると2度とかからないのは、体内の免疫細胞が病原体を倒す武器(抗体)のつくり方を学習して忘れなくなり、以降、何度その病原体が体に入ってきても迅速に攻撃できるようになったからです。

このしくみを利用したのがワクチンです。ワクチンは、病原体(抗原)の毒性を弱めたり失わせたりした人工製剤で、ワクチンを体に入れると、免疫細胞が、その病原体用の武器(抗体)のつくり方を覚えて感染に対抗する力(免疫)がつきます。

ただし感染を避けたい病原体がウイルスの場合、細胞膜という共通の構造がないぶん汎用的なアプローチが難しい。しかも遺伝子の変異もあるため、ワクチンの製造自体が困難になるケースは多々あります。