紙で作られた作品や立体、水彩画で破れるリスクがあるものなど、動かすこと自体がリスクを伴うため、貸してもらいにくい作品もある。フランスやアメリカの場合、作品の貸し出しに国の承認が必要になる場合があるという。

理想の出品リストから、実際に借りられる作品へとプランを入れ替える中で、最初に求めていた作品と代替作品のサイズが異なれば、展示プランも変える必要がある。また、「作家本人が、『この作品を出したい』と言う場合もあります」(笠原副館長)。

海外から運ぶ場合は作品の管理者も来日

大変なのは輸送だ。まず、輸送する作品に合わせて「クレート」と呼ばれる木箱を制作しなければならない(出品側が製作する場合も)。輸送は、展示まで行う技術と専門知識を持つプロのスタッフを擁し、適切な温湿度管理ができるトラックを持つ美術輸送の専門業者に頼む。

海外から運ぶ場合は、必ず航空便を使い、それぞれの作品に損害保険をかける。美術館から1点だけ借りる場合でもその美術館の作品管理の専門家がつく。「日本では役割分担があまりできていないので、学芸員が行うことが多いのですが、海外の美術館で作品の管理をするのは『レジストラー』です。その人たちをビジネスクラスでお呼びする」(笠原副館長)。

その後、運送会社の保税倉庫にいったん作品を集める。国内外のあちこちから作品を集めるわけで、何度も保税倉庫に集め、美術館に運ぶ、という行程を繰り返す場合もあるという。その後、1週間ぐらいかけて学芸員立ち会いのもと、搬入展示が行われ、内覧会やレセプションなどが開かれて会期初日を迎えるわけだ。

海外にいる所有者との出品交渉は、電話や手紙などでも行えるが、作品の輸送には必ず人がつくのだ。新型コロナウイルスの影響で作品が届かない、あるいは展覧会自体を開けない事態が起こるのは、人が動くからという理由もある。

同館も緊急事態宣言時には休館。今夏予定していた「『クロード・モネ―風景への問いかけ』オルセー美術館・オランジュリー美術館特別企画」が翌年に延期となり、4月18日から予定していた現代作家の「鴻池朋子 ちゅうがえり」展を延長し、6月23日〜10月25日に開くといった変更を行った。

もっとも、コロナによって美術館の方針が大きく変わることはない、と笠原副館長は言う。「今は海外へ出張に行けないし、状況によっては、展覧会が再度延びる可能性はあります。しかし、展示を通して過去と現在を提示し未来につなげていく、美術館本来の活動を続けるための企画を立て、粛々と準備していくしかありません」。