では、国内で完結する展覧会なら、事情は異なるのだろうか。

奈良県立美術館は、東洋美術や浮世絵、着物、陶芸など、室町時代から1970年代までの作品を主に扱う。1つ大きく異なるのは、笠原氏は「作品を貸し借りすること自体には、基本的にはお金がかかりません」と言っていたが、日本美術が中心の奈良県立美術館では、個人なら出品謝礼、美術館などなら出品料という名目でお金がかかる場合があることだ。ただし、公立美術館同士の場合は、こちらも出品料はかからない。

常設展示室がなく、全館を使って展覧会を開く奈良県立美術館では、館独自で企画する特別展、コレクションを中心に行う企画展、他館と協力して行う巡回展がある。

今回は企画展について話を聞いたが、基本的な流れはアーディソンと同じで、企画→出品交渉→輸送→展示となる。輸送は、出品が確定した後、美術品輸送の実績がある複数の輸送業者の入札を行う。

作品の輸送に学芸員が付き添う場合も

奈良県立美術館には、レジストラーがいないため、輸送などの過程で、学芸員が出張することもある。

「私が経験した中で一番長い出張だったのは、富山県の高岡市からスタートして、新潟県の長岡市、秋田県、宇都宮市、埼玉県と回って輸送業者さんの東京の倉庫に納めて終了したというケースです」と学芸員の飯島礼子氏。このときは、別のチームが東京などの集荷に回っていたので、東日本で集荷したものは東京の倉庫にいったん集約し、奈良に運んだという。

「あちこちから作品を集めることになるので、2、3チームに分かれて運ぶ、2週間ぐらい出張する、日帰りで近郊へ毎日集荷に回るといったケースがあります」(飯島氏)。国内で作品が揃う場合には、また別の大変さがあるのだ。

コロナの影響はどうだったのだろうか。

奈良県立美術館は、2月28日から臨時休館に入ったことで、3月15日まで予定していた「田中一光 未来を照らすデザイン」展が終了。緊急事態宣言下、特にGW中を中心に、次回以降の展覧会の会期を変更するのかどうか、開催時にどんな対策を取るか、その後の展覧会の調査などについて話し合いが行われた。

地方の緊急事態宣言解除後の5月18日から1カ月遅れで予定していた企画展を開いた後、7月25日から予定通り「みやびの色と意匠 公家装飾から見る日本美」が開かれた。「みやびの色と意匠」を担当していた飯島氏は、会期が変更されるかどうかが決まらないとポスターも作れず広報対応もできないため、ポスターの完成が遅れるなどの影響を受けた。