スラム街や国境裏ルートなど、世界の危険地帯を数多く取材してきた丸山ゴンザレス氏。誰もが避ける危険地帯の取材はどうして可能なのか? 世界の危険地帯に生きる人たちはどんな生活をしているのか? 海外を歩くときに私たちはどこに気をつければいいのか? 丸山氏が自身のノウハウや経験談を書き記した『世界ヤバすぎ! 危険地帯の歩き方』を基に、今回はスラム街の実態をお届けする。

スラム街は日が暮れる前に去る

取材に限らずスラム街に踏み込む際に絶対に守っている原則がある。それは「夜禁止」である。日本でも子どもが夜出歩くのはよくないこととして教育されているように、スラム街でも夜に出歩くのはリスクしかない。

日中、どんなにヘヴィに取材を重ねていても日が暮れ始めたら帰り支度をする。夜はスラム街を確実に後にするようにしているのだ。これだけは、どんなにタイトな取材スケジュールであっても守るようにしている。

フィリピンのトンド地区を取材していた時のことだ。路地裏の細い道で角材を担いで歩いている中年男性に出会った。話しかけてみると「家の増築用の資材を運んでいる。せっかくだから見に来れば」と気さくに応えてくれた。人の良さそうな顔をしているし、増築するということは家族と住んでいるはず。それならば悪い展開にはならないだろうと、彼の家におじゃますることにしたのだ。

家に行ってみると、3階建の雑居ビルのような建物で外階段を登ったところに部屋があった。このスラムの中では立派な部類だった。男性は奥さんと子ども4人の6人家族で長女が大学に入ったのをきっかけに部屋を拡張するのだという。気になったのは部屋に入るまでの外階段に侵入防止の鍵のついた栅をつくりつけていたことだ。

「このあたりは治安が良くないのか?」と聞いてみると、「顔見知りばかりが住んでいるので、そんなことはない」とのこと。そこで「では、なんであんなに頑丈な栅をつくっているのか?」とたずねた。すると「夜になると外から悪い連中が入ってくるので、そいつらが侵入しないようにしているのだ」と教えてくれた。さらに「夜はレイプや殺人も起きるので娘はもちろん、妻も外出はさせない」という。