一方でここ数年は事務系の派遣社員などとして勤務。年収も初めて300万円を超えた。ただ、ここも昨年秋に雇い止めに。現在はウーバーイーツの配達員などをして食いつないでいるが、新しい仕事はまだ見つかっていない。

「職歴がすっかり荒れちゃって……。就職活動で面接を受けても、履歴書を見ただけで『すぐ辞めるやつ』という烙印を押されるんじゃないかと、不安しかありません」

転職を繰り返した理由について、カツヤさんは上司や先輩による暴言・暴力を挙げる。「なめてんのか、クソガキ!」「君はどれだけ自分がかわいいんだ」などと怒鳴られたほか、頭をはかれたり、ビンタをされたりしたこともあったという。

ただ暴言や暴力を受けた詳しい原因についてはいずれも「覚えていない」と話す。カツヤさんの中では、パワハラの揚げ句クビにされたという理不尽極まりない記憶だけが残っているようにみえた。

もしや、これは冒頭の「遅刻問題」と同じなのではないか。暴力は論外とはいえ、上司や先輩らも突然激高したわけではあるまい。ただ、なぜ叱責するのかの「因果関係」の説明において言葉足らずの面もあったのではないか。「それくらい想像できて当然」という振る舞いは、あくまでも「定型発達」の側の“常識”でしかなかったりする。

カツヤさんはもう1つ問題を抱えている。借金である。

派遣社員として比較的安定した収入を得るようになってから、クレジットカードのローンなどが増え始めた。「買い物や友人との食事に使った」と言い、総額が100万円を超えた昨年、弁護士に相談して任意整理に踏み切った。今も毎月約5万円の返済を続けている。

お金の管理が苦手で借金を抱えてしまうのは発達障害の傾向の1つである。

部屋でよく携帯をなくすので「3台持ち」

取材で話を聞いていたとき、カツヤさんがテーブルの上にスマートフォンの端末3台とモバイルルーター1台を置いていることに気がついた。失業中のうえ借金もあるのに、端末を複数台持つ余裕など本来はないはずだ。そう指摘すると、またしてもカツヤさんと議論になった。カツヤさんは次のように自らの正当性を主張した。

「(部屋の中で)よく携帯をなくすんです。部屋が汚いのもADHDの特性。そういうときにもう1台あれば、呼び出し音ですぐに見つかるでしょう。(複数の端末を持つことは)私にとって保険のようなものです」

議論は平行線だった。私は早々に話題を切り替えることにした。そもそも私はカツヤさんの家族でも、主治医でもない。そういえば――。カツヤさんの家族や主治医は彼の発達障害の特性とどう向き合っているのか。