あるとき、夏の休暇を利用し帰省をし、そこから戻ってきた聡子と面談をした。都内のティールームで会ったのだが、彼女の表情がいつになく寂しそうだった。

「ご実家で、久しぶりにゆっくりできた?」と聞いた私に、聡子が言った。

「父が末期のがんなんです。帰るたびにやせ細っていく。毎日顔を合わせていたら、そう感じないのでしょうが、数カ月おいて会うから、弱っていく様子がわかって痛々しい。そんな父を見ると泣きそうになってしまうんです。無理にでも笑って元気な姿を見せなきゃと、毎回思うんですが、私がヘタレなんで、困ったものです」

さらにこう続けた。

「弟は、結婚してお嫁さんを父に見せることができた。両親も新しい家庭を築いた弟には安心していると思うんですね。心配の種は、私。父が生きているうちに、ウェディングドレス姿を見せたかったけれど、今の婚活状況だと無理かもしれない……」

「まだ、諦めるのは早いわよ」

「そうですね。でも、もしいよいよ危ないとなったら、写真館で、ウェディングドレスを着た私1人の写真を撮ろうかなとも思っているんですよ。『お父さん、こんなに大きくしてくれてありがとう』って」

なぜ婚活が停滞してしまうのか

この話を聞いて、私は切なくなった。仲人が、確実に結婚できる相手を明日彼女の前に連れて来れるわけではない。ご縁を結ぶ手助けはできるけれど、お見合いした相手とその後の成り行きは、2人の問題だ。

「ソロのウェディングドレス写真も記念になるかもしれないわね。聡子さんは、スラっとしたスリムな美人さんだし、きっとどんなドレスを着ても似合うと思いますよ」

そのときは、そんなことを話して、面談を終えた。

その後も、数人とお見合いしたが、交際に入っても数回会うと、“交際終了”になっていた。婚活が停滞していたので、一度リモートで面談をしたことがあった。

彼女のリモート画面の背景に、おしゃれな棚が見えたので、余談で、「すてきな棚ね」と言うと、彼女がこんなことを言った。

「私の手作りなんです。大工の娘なので、こういうのを作るのが好きなんですよ。そこは父の血を引いたのかもしれません」