今回は、ADHD(注意欠陥・多動性障害、発達障害のひとつ)と診断された人の“成功体験”を紹介したい。昨年、10回目の挑戦で、社会保険労務士の試験に合格したミツルさん(仮名、50歳)だ。

難関試験に合格も、周囲の反応は…

社会保険労務士は合格率6〜7%ともいわれる難関資格である。取材の際、まず「おめでとうございます」と伝えた。すると、ミツルさんは丁寧に「ありがとうございます」と応じた。ただ、その後の話ぶりは意外なほど冷静だった。

「確かに社会保険労務士になるパスポートは手に入れました。でも合格することが目標ではありませんから」

発達障害と診断された人の中には、いろいろな会社に勤めても、ケアレスミスが多かったり、人間関係がうまく築けなかったりして解雇や雇い止めにされる人も少なくない。そして転職するたびに困窮度が増していく。ミツルさんもそうだった。組織の中でうまく立ち回れなかった自分が、社会保険労務士としてやっていけるのか――。

そうした疑問や不安を抱いているのはミツルさんだけではないという。

「両親に合格を伝えたときは、『お前が本当にADHDなら、社会保険労務士なんて受かるはずがない』『やっぱり甘えていただけだ』と言われました。離婚した元妻には今も養育費を払っているのですが、『頼むから、独立して開業なんてやめてくれ』と言われています」

ミツルさんの周囲はお祝いムードからは程遠いのだという。ミツルさんの半生とはどのようなものだったのだろう。