このように、糖尿病と感染症は密接な関係にあります。そのため、近年では感染症が改善されると血糖コントロールも良好になるというデータも出てきています。

とくに歯周病の治療で歯肉の炎症が引くと、インスリン抵抗性が改善された、という臨床研究が数多く報告されています。つまり、“外堀”からも糖尿病対策は可能なのです。

重症リスクを引き下げる方法とは?

同じ糖尿病患者でも、ある条件によって、感染症の重症化リスクは大きく変わってきます。それは血糖コントロールができているかどうか、の違いです。

血糖コントロールとは、血液中のブドウ糖=血糖の値をある一定の範囲内に保つようにすることです。血糖コントロールができていれば、たとえ食後に一時的に血糖値が高くなっても、やがて適切な状態に戻ります。

これは新型コロナ感染症が蔓延した初期段階から指摘されていました。武漢大学人民病院の調査では、中国河北省の7337人の新型コロナ患者のうち、952人が2型糖尿病患者でした。そのうち、人工呼吸器の装着が必要となったり、多臓器障害の発生や死亡リスクが高かったのは、血糖コントロールがうまくいっていなかった人たちでした(528人)。逆に良好な人たち(282人)は比較的軽症で済み、合併症や重症化リスクは軽減されたといいます。

この調査では血糖コントロールをどの程度改善すればよいかも示され、70〜180mg/dlの範囲で良好にコントロールされている患者は、180mg/dlを超えている血糖コントロール不良の患者に比べ、死亡リスクが抑えられていることも明らかになりました。

また、過去1〜2カ月の平均血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(6.5%以上で糖尿病が強く疑われる)の平均値は、コントロール良好のグループで7.3%、コントロールできていないグループでは8.1%でした。

現段階では、なぜ血糖コントロールができていないと重症化するか、明確な要因は不明ですが、データからは差異があることは明らかです。

もちろん、合併症を引き起こすリスクに血糖コントロールが大きく関わっていることはいうまでもないでしょう。たとえインスリン注射を使っていても、しっかりコントロールできていれば、重症化リスクは低減されます。

逆に空腹時血糖値などの数値がそれほど極端に高くなくても、一日中、常に高めの数値で推移したり、食後血糖値が著しく高かったりするなど、血糖コントロールができていないと、重症化リスクは高まってしまうのです。

著者:森 豊,松生 恒夫