突然の視力障害や口の乾きに悩む危険も。糖尿病にもかかわらず、糖質制限ダイエットを試みた男性の失敗とは? 糖尿病の専門医である森豊氏と、腸の専門医である松生恒夫氏による新書『血糖値は「腸」で下がる』より一部抜粋・再構成してお届けする。

一生のうちにすい臓から分泌されるインスリンの総量については、生まれつき決まっている、と考えられています。元来、日本人を含むアジア人は、インスリンを分泌する能力(インスリン分泌予備能)が欧米人に比べて低いとされています。そのため、アジア人はそれほど太っていなくても、糖尿病になりやすいのです。

というのも、肥満によってインスリン抵抗性が強まると、下がらない血糖値を下げるためにより多くのインスリンが分泌されるようになります。ただでさえインスリン分泌予備能が低いアジア人は疲弊・枯渇が早くなり、糖尿病になってしまうわけです。

なぜ太った欧米人は糖尿病にならないのか?

一方、欧米人にはアジア人ではあまりお目にかかれない、超肥満な人が存在します。たとえば、元大関の小錦さんのような体型の人。小錦さんはあれだけ太っていても糖尿病ではないといいます。

小錦さんはハワイ出身のポリネシア系でアジア人の系統ではありません。もともとインスリン分泌予備能が高いため、肥満状態でインスリン抵抗性が強まっても、十分にインスリンを分泌し続けることができるために枯渇することがなく、糖尿病にならずにいられる、と推測されます。日本人であれば、あそこまで太る前にすい臓がギブアップして糖尿病になってしまいます。日本人にとって、肥満がいかに大敵かを示す例の一つです。

日本人に肥満が増えた大きな理由は、食事の欧米化といわれます。実際、アメリカに移住した日系人では糖尿病の頻度が高いことが明らかになっています。

最新の「国民健康・栄養調査」(2019年)によると、日本人男性の3人に1人が肥満(BMI25以上)です(女性は22.3%)。コロナ禍にあって、「コロナ太り」という言葉が生まれるなど、肥満の傾向はさらに高まっています。糖尿病を招く肥満の怖さを理解し、肥満にならない努力が必要です。

肥満やメタボリックシンドロームが糖尿病にとって大敵であることはわかっていただけたかと思います。無理なくダイエットを実践することは、血糖コントロール、糖尿病のリスクを回避する上でもとても大事です。