――「女性として生活する」こととは、どのようなことなのでしょうか。

「女性であること」を経験することです。例えば、女性として学校に通い始めてから、初めてゼミの中に女子会があることを知り、誘われて参加しましたが、こんなアクティビティがあるのかと驚きました(笑)。

反面、ネガティブなことも経験しました。例えば、メイクをして街に出れば「どこに行くの?」と声をかけられ、バーに行くと、隣に座った男性に「キャバクラの人ですか?」「モデルさんですか?」と言われることもがあります。もちろん何の面識もない人たちからの言葉で、嬉しいときもありますが、度が過ぎていて失礼だと感じることもあるんですね。

作中では、はるな愛さんとの対談も ©2021「息子のままで、女子になる」

男性から女性に性別を移行したことで女性の苦労がわかったような気がしています。朝のメイクもそうですが、女性であることを保つ苦労があり、そして、女性であるというだけで、日常的に性的な目線にさらされ、ぶしつけな言葉を浴びせられることもあるということです。

例えば、痴漢や強姦など犯罪行為をすれば、刑事罰の対象になりますが、それがないうちは少なくとも罰せられることはない。そういう状態を社会が許容してきたのだと感じました。

周りの女性たちに聞いてみると、見ず知らずの人から何かしらセクハラ行為を受けた経験があることを知りました。

今は#MeTooが盛り上がっていますが、従来は「自分だけに起こったことなのでは」「公にすれば自分の立場が不利になってしまうのでは」という気持ちがあり、声を上げること自体がやはり難しかったのかと思います。

男性として生きているときには、こうしたことはまったく感じませんでした。今は、女性であることの大変さを意識しながら生きている毎日です。

『スイミー』が自分の原点

――小さい頃から絵を描くことが好きだったそうですね。

小学校1年生の頃、先生に「男子の輪の中に入って遊びなさい」と言われることが嫌で、昼休みに教室でひとり、絵を描いていたんです。ところが、それがきっかけで、遠足のしおりや壁に貼るポスターを描くことを依頼されるようになりました。絵を描くことが自分のクラスの中での役割になったんです。

2年生のときに『スイミー』を読んだのですが、自分はスイミーなんだと思いました。『スイミー』は赤い魚の中に黒い魚の自分がいることで、群れの中の目になって大きな魚に食べられることなく、自由に泳げるようになるという話です。