西島秀俊が50歳になり満を持して「言葉」を発し始めた。公開中の映画『ドライブ・マイ・カー』では文学的なテキストを扱う演出家役。朝ドラ『おかえりモネ』(NHK)でも、作品のメインテーマをセリフで直接的に表現した。7年前ごろにブレイクし、CM出演数もピークになった時期とはまた違うステージに立っている人気俳優の現在を考察する。

ハルキ的主人公演じた映画『ドライブ・マイ・カー』

カンヌ国際映画祭脚本賞受賞作品として大きな注目を集め劇場公開された『ドライブ・マイ・カー』。村上春樹が2013年に発表した同名の短編小説を『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が映画化した。

主演の西島秀俊は舞台役者であり演出家でもある主人公の家福(かふく)を演じている。家福は都会的な文化人で、女優の妻(霧島れいか)と2人で暮らし、愛車はスウェーデン車の赤いサーブ900。主宰する劇団ではベケットの「ゴドーを待ちながら」を日本語と英語、インドネシア語を交えて上演する。

(写真:©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)

その独特の演出法からしても自分のこだわりを貫く生き方は迷いがないように見えるが、家福という名前とは反対に家庭的な幸福には恵まれなかった。家福は過去に幼い子を亡くしており、妻との仲は一見、良好だが埋められない溝はある。そして、家福は妻をも突然、失ってしまう。

悲劇の2年後、家福は広島の演劇祭に招かれ、「ワーニャ伯父さん」の演出をするため長期滞在をすることに。事故防止のため自分で運転することを禁じられ、運転手を付けられる。その運転手はまだ若い女性のみさき(三浦透子)だった。

(写真:©2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会)

瀬戸内の海に面した宿に泊まることにした家福は、毎日片道1時間をかけてみさきに送迎をしてもらうことになる。

この映画を見た人は、西島秀俊が予想以上に村上春樹の世界にすんなり溶け込んでいることに驚いたのではないだろうか。