「ほかに嘘をついていることはない? 今正直に白状すれば許すよ」

すると、観念したような面持ちでボソリと言った。

「実は、結婚しているんだ」

「え、何よ、それ?」

清美は思わず泣き出してしまった。すると、孝徳はオロオロしながら話し出した。

「ごめん、本当にごめん。でも、これだけは信じてほしい。僕は清美に本気だし、妻とは今別居していて、離婚調停中なんだよ」

妻との間には子どもがいて、妻の実家で暮らしていることもわかった。
夫婦仲が良かった結婚当初は、都内に広めのマンションを借りていた。だが子どもが生まれると、家事や育児を1人で背負っていた妻との関係がだんだんギクシャクし始め、妻は子どもを連れて実家に帰った。そこで孝徳は、ウィークデーは都内で過ごし、週末やまとまった休暇が取れるときは、妻と子どもの元に帰っていた。

ところが、そんな生活をするようになってから2人の気持ちはますますすれ違っていき、離婚の話し合いに入るようになった。都内のマンションは解約し、会社の近くに今のワンルームを借り直したのだという。

そんなこれまでの経緯を話し、孝徳は続けた。

「離婚したら、清美との結婚をちゃんと考えたいと思っているよ」

そして、泣きじゃくっている清美を抱きしめ、涙を親指で拭ってキスをしてきたという。そこからなし崩し的に、2人でベッドに行った。

ここまで話すと、清美は私に言った。

「今思えば、結婚していることがわかった時点で、別れればよかったんですよね。でも、好きな気持ちが先行しちゃっていた。あと、とにかくコミュ力があって口のうまい人だったので、いつも言いくるめられちゃうというか。マンションを解約してワンルームに住んでいるのも離婚の準備をしていることの表れだし、心のどこかで、“離婚したら結婚できるんじゃないか“って思っていたんですね」

不倫を終わらせた2つのきっかけ

ところが、「離婚調停をしている」という話だったのに、一向に離婚する気配がないまま2年が過ぎようとしていた。

そんなとき、清美の親友の一人の美江(仮名)から「結婚することになった」という連絡がきた。親友のなかで独身は清美だけになってしまう。グループラインで、美江はこんなことを書いてきた。

「結婚式もやりたかったし、“コロナが落ち着いたら結婚しよう“って言ってたの。でも、落ち着きそうにもないし、ステイホームだった時期に彼が隣にいてくれて本当に感謝したし、とりあえず籍だけ入れることにした」

美江が彼と付き合い出したのは、清美が孝徳に出会って半年後のことだ。「彼氏ができた」という清美に触発されて、美江も婚活パーティに積極的に参加するようになり、そこで出会ったのが、婚約者だった。後発の美江に先を越され、ゴールインされてしまった。