ハーバード・ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーにして、心理学者のアシュリー・ウィランズが書いた『TIME SMART(タイム・スマート)』。効率性一辺倒ではない、異色の時間術の本だ。「お金より時間が大事」「生産性向上はタイム・リッチ(時間的に裕福な状態)から」「まず、健康で幸福な生活を送る、その後、生産性・創造性が上がる」と説く。もちろん、心理学者だから、科学的な調査、統計データでその主張を裏付ける。
「仕事のタスクが少ない人ほど、タイム・プア(時間的に貧乏な状態)に陥りやすい」と語るのは、通信業界でキャリアを積み、独立後は書家として活動をすると同時に、プレゼンテーションクリエイターとして年間多くの企業で研修講師をつとめる前田鎌利氏だ。前田氏が本書を読み解き、自身の念(おも)いを語った。その前編をお届けする。

自分の仕事を極めればよい? タスク依存に要注意

独立する以前は、ソフトバンクに在籍していました。ソフトバンクショップに関連する仕事をしていたこともあって、土日出勤することも珍しくありませんでした。出勤していなくても、携帯電話が鳴って相談を受けたりもします。その後、今度は、上司に私が電話をかけて、相談したり。しょっちゅう電話がかかってくるので、土日でも映画館に行ってはいけないような気がしていました。正直、あまり休めない(笑)。ソフトバンクが日本でiPhoneを独占販売していた時期も経験しています。そのころ、表参道のショップから、ずらっと100メートル以上の行列ができていましたので、社員総出で対応する事態でした。

管理職になると、今度は会議だらけになります。4社から5社ぐらいのグループ会社を兼務することで、ありがたいことに学びは多いのですが、会議も多い(笑)。ちょっとでもスケジュールが空いていると、どんどん別の会議を入れられてしまう。会議から会議にハシゴし続ける日常でした。『TIME SMART』の中で、お金や仕事を優先し、時間がなくなってしまって苦しい状態になることを「タイム・プア」と呼んでいますが、まさしくそのような状態。そこで、いかに自分が会議に出なくても仕事が回るようにするかを意識するようになったのです。

自分が会議に出席しないと、決まらない、回らない仕事があるというのは本当に光栄なことですが、部下育成を行う立場でもある管理職にとって、部下と向き合う時間がなかなか捻出できなくなります。管理職という立場にあるならば、部下を少なくとも2人、つまり自分の右腕、左腕となるような人材を育てることが求められます。管理職は実績を残すこと以上に部下育成を行う手腕が評価されますから部下と向き合う時間が確保できないことは致命的なのです。また育成をかねて、部下を一緒に会議に連れ回してしまうと、彼らの時間を奪うことになってしまい、自分に課されている仕事(タスク)をこなす時間がなくなってしまうのです。