ですから、ある程度部下に権限移譲をして自分が出席しなければならない会議を減らし、部下に任せることを行いました。それによって自分の席にいる時間が増え、部下からの報連相や1on1などで部下と向き合う時間を確保することに成功したのです。「タイム・プア」から「タイム・リッチ」へとシフトが図れたのでした。

先ほど述べた、部下のタスクですが、リモートワーク下において、このタスク管理が非常に難しいものになりました。誰がどれくらいのタスクをどれくらいの進捗で行っているのかは出社して対面していればその様子から伺うことも可能でしたが、リモートワーク下では目隠しをしてマネジメントをしているようなものですから、部下のタスク量や進捗が見えなくなっているのです。

このタスク量は気をつける必要があります。多すぎるタスクは当然オーバーフローしてしまうので問題ですが、優先順位をしっかり指示することで解消できます。それよりもむしろ課題はタスク量が少ない人。限られたタスクしかないと、与えられたタスクに無駄に時間をかけてしまう傾向があるのです。つまり、与えられたタスクのアウトプットをよりいいものにしようと必要以上に時間をかけ、磨き続けてしまうのです。「タスク依存」といってもいいような状況です。「自己評価が100%で満足していても、管理職の評価は50%」とそのアウトプットの完成度を管理職に指摘されることはどこの職場でもよくある光景ではないでしょうか。

タイム・プアはタスクの優先順位づけで解消できる

自己満足で磨き上げるよりも、生煮え状態でも上司に相談して、コミュニケーションをとりながら完成度を高めていったほうがいいでしょう。手元に置きすぎていると方向性がずれていたり、やらなくていいことまでやってしまうことが増えるのです。

前田 鎌利(まえだ かまり)/書家・プレゼンテーションクリエイター。一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事。株式会社固(かたまり)代表取締役。東京学芸大学教育学部書道科卒業後、17年にわたり通信事業に従事。2010年に第1期ソフトバンクアカデミアで1位を獲得。同社認定プレゼン講師を経て2013年に独立。一般社団法人継未-TUGUMI-を設立し、全国各地で書道をはじめとする日本文化の教室を展開。書家としてJリーグ「絶対突破」、JAXA「こうのとり」他多くの書を揮毫。また、ビジネススキルの講師として年間多数の企業研修・講演を行う。著者に『プレゼン資料のデザイン図鑑』『課長2.0』等がある(写真:著者提供)

したがって、上司は、1つのタスクに執着しすぎないよう、適度にタスクを与えて同時並行でマルチタスクをこなせるようにするのです。

ビジネスでは時間の経過によって仕事の優先順位が入れ替わることは日常茶飯事ですから、「やっぱり、あれ、やらなくていい」「後回しでいい」というタスクも当然出てきます。ですから、やるべき仕事とやる必要がない仕事というように、最初のうちは上司がどんどん決めてあげることをオススメします。

私は絶えず部下に指示したタスクによって「タイム・プア」にならないように心がけていました。そのうち、私が指示を出す必要もなく、部下たちが自ら優先順位をつけられるようになっていきました。能動的に「タイム・プア」が回避できるようになっていくのです。「タイム・プア」は能動的優先順位づけを自分自身で自発的に行うことで、大半が解消できるのです。

また、「何かあったらオフの日でも対応しなければ」という方針の企業では、オフを犠牲することが美徳になる企業文化ができてしまうことが散見されます。もちろん、対応しなければならない場合は致し方ないですが、その場合であっても普段の優先順位づけができてくると、オフを本当に犠牲にして行う必然性があるかどうかの判断ができていきます。

これらのことを強く意識するようになったのは、4〜5社の事業を兼務し始めて、タイムマネジメントの難しさに直面した頃のことです。部下からのレポートを余計なものを省いて端的なものに変えてもらったり、優先順位の入れ替わりで「やらなくてよいタスク」を決めて伝えることでアウトプットの精度を高め、自走力を身につけてもらいました。