栄養生態学の世界的権威にして、「生物は何を食べるべきかどうやって知るのか」を32年にわたり研究するデイヴィッド・ローベンハイマー氏。同氏が突き止めた「人間含め、あらゆる生物は『タンパク質欲』に突き動かされて食べている」という事実について、『科学者たちが語る食欲』より再編集・抜粋してお届けする。

なぜ自然界において人間だけが過食をし、肥満や糖尿病などの問題に見舞われているのか。この疑問を解く鍵が「食欲のメカニズム」にあると直感した私は、人間の食欲がどのようにして働くのか、何を食べるか・いつ食べるのをやめるかがどのようにして決まるのか、人間で実験をして突き止めることにした。

被験者は最初の2日間、肉、魚、卵、乳製品、パン、果物、野菜などのビュッフェから、好きなものを好きなだけ食べることができた。食べたものの重さと成分は、その都度細かく記録される。

続いて3日目と4日目に、被験者は2つのグループに分けられ、食事の選択肢を狭められた。

一方のグループは高タンパク質食のビュッフェ(肉、魚、卵、低脂肪乳製品メイン)を提供され、もう一方のグループは肉・魚以外のさまざまな低タンパク質・高炭水化物・高脂肪食(パスタ、パン、シリアル、デザートなど)を与えられた。このときも、すべての被験者は与えられた食事を好きなだけ食べることができ、食べた量と成分が細かく記録された。

あるグループだけ明らかに食べすぎた

被験者が自由に食事を選択できた第1段階では、事前に予想した平均的な摂取量に近いカロリーを摂り、タンパク質のカロリー比率は18%だった。これまでの研究で、世界中の人のタンパク質比率の標準値として15〜20%という比率が出ていたので、18%は特質すべき数字ではない。

ところが、被験者が高タンパク質食グループと高炭水化物・高脂肪食のグループに分けられた第2段階では、被験者全員が自由選択段階と同じタンパク質の摂取比率を維持した。つまり、タンパク質の摂取目標を達成するために、高炭水化物・高脂肪食のグループは自由選択段階に比べて総摂取カロリーを35%増やさなくてはならず、高タンパク質食の被験者は総摂取カロリーを38%減らしたのだ。

タンパク質に対する食欲が、食品の総摂取量を決定していることを示す結果である。