このタンパク質に対する欲求を、私は他の動物でも以前に確認していた。その動物とは、草食の「コオロギ」である。

生物学研究の一環でバッタの類似種であるモルモンコオロギを研究していたときのこと。アメリカ南西部に生息し、何キロも続く群れで行進する昆虫だ。

ヤマヨモギが生い茂る地を毎日2キロ北上するコオロギの一群が幹線道路を横断する様子を見ていて気づいた。コオロギが車に轢かれると、その真後ろにいるコオロギが立ち止まって仲間の死骸を食べたのだ。そしてまた車に轢かれる、これを繰り返していた。

「タンパク質欲」が最も強い欲求

なぜ草食性の昆虫が、周囲に植生が生い茂る中、集団自殺に至るまで共食いをしたのか。その鍵こそがコオロギが持つ「タンパク質欲」だった。

コオロギの最寄りの良質なタンパク質源は何か? 目の前のコオロギだ。コオロギの共食いを駆り立てていたのはタンパク質に対する強烈な食欲で、集団での移動は「前進しないと、後ろのコオロギに捕食されてしまう」という本能的恐怖心からだった。

このコオロギをきっかけに、あらゆる動物を調査した結果、どの生物もタンパク質欲が最も強い摂食動機のように思われた。どんな場合にも最優先されたのは一定量のタンパク質の摂取であり、私たちが食べるほかのすべてのものに影響を及ぼすほどタンパク質の力は強大だったのである。

事実、ある実験で低タンパク質食を与えられた被験者は、実験期間中、摂取カロリーを12%増やしていた。12%という総摂取カロリーの増加は、世界的な肥満の蔓延を説明するのに十分な数字である。