新たな年を迎え、防災・減災への備えを強化しようと多くの自治体は考えている。地震はもちろん、多発・大型化する風水害の際には「災害関連情報をいかに正確に伝えるか」が鍵となる。悩みのタネは、「防災行政無線が聞こえない」という問題。市区町村ごとにさまざまな取り組みが進むが、国の関連施策もスピードアップしてほしい。

「大雨大風の中では聞こえない」導入された防災ラジオ

私はかねがね、防災行政無線を何とかしてほしい、と思っていた。窓を開け、身を乗り出しても何を言っているのか、聞き取れないことが多い。高層マンションやビルが並ぶ場所では音が建物に反響するから、と考えていた。ところがここ数年、大雨や強風の中で聞き取りづらいという問題が浮上している。

公園などに設置されている防災行政無線のスピーカー。「聞きとれない」という苦情が増えている。(撮影:河野博子)

埼玉県東北部の加須市は、2019年の台風19号の際、利根川の水位が深夜に急上昇し、10月13日午前1時と午前2時に避難指示を発令。市の人口約11万人のうち、9500人が避難所などに避難した。暴風雨の中、防災行政無線の音声が届かず、水防団、消防団、自治会がフル回転して情報を伝えた。直後に行った市民向けアンケート調査で課題を探ったところ、ダントツに多かったのが「防災無線の情報が聞こえなかった」という声だった。

その後、加須市は市の防災情報を集約したスマートフォン用アプリを配信し、これで防災行政無線の放送内容などを確認できるようにした。放送内容は、登録者へのメール配信にも載せ、ホームページ上や電話の自動音声応答サービスでも確認できる。

これに加え、2020年5月には防災ラジオの無償貸与を始めた。AMやFM放送を聞けるラジオで防災行政無線の放送があると強制的に切り替わり、避難する時に持ち出せる大きさだ。貸与率は地域によって異なり、今年11月現在、住民登録をした世帯数のうち、23.3%〜52.0%が貸し出しを受けている。