国立がん研究センターが行った調査(患者体験調査報告書、2018年度調査)によれば、がんと診断を受けた時に就労していた人のなかで、退職や廃業になった人の割合は19.8%。そのうち「再就職・復帰の希望はあるができない」と回答した人は22.5%にも上ります。また、がんと診断された後に「休業・休職した」と答えた人のなかで、全体の37.6%が金銭補償を伴わない休みだったと回答しています。

働く世代へのがん対策の充実は、厚生労働省も課題としているものの、支援の実態は企業によってまちまちで、言わずもがな、就業が継続できなくなった場合には、収入の面でも大きな影響が生じることになります。

こうしたことから、AYA世代のがん患者さんが在宅ケアを望んでも、それが叶わないことが少なくないのです。具体的にどんな負担がかかってくるのか、前回の記事で紹介したAさん(39歳)の例で説明しましょう。

39歳Aさん、在宅ケアの費用は約11万円

在宅ケアは、医師による訪問診療と看護師による訪問看護、ヘルパーなどによる訪問介護などで成り立っています。医療費や薬代は、通院時や入院時と同じように医療保険が適用されます。医療保険の負担の割合は年齢によって決められていて、Aさんを含むAYA世代の医療費は、3割負担になります。

例えば、月2回の訪問診療とした場合には、月に約2万円程度の負担額がかかることになります。そこに、薬代や採血や在宅酸素の使用など、診療の内容に応じて追加が発生します。

Aさんの在宅療養期間は約3カ月。訪問診療と訪問看護でかかった3カ月分の合計金額は、医療保険による3割の自己負担で11万円ほどでした。これは、訪問診療10回、電話での再診4回、採血検査2回、訪問看護19回の費用です。このほかに自費で受けた家事代行などのサービス代が別途かかっています。

在宅療養をスタートさせた最初の頃は、自立した生活ができていたAさんですが、終末期のがん患者さんの多くがそうであるように、徐々に体を動かすのがしんどくなり、最後の1カ月半ほどは生活全般において誰かの手助けが必要な状態でした。

AYA世代の在宅療養にとって大きな課題なのが、この「日常生活のサポート」です。患者さんの体が動けなくなってきたとき、日々の買い物や料理、掃除や洗濯といった家事のサポートを誰がやるのか。介護保険サービスが使えればヘルパーさんにお願いできる内容ですが、40歳以下はそれができません。

Aさんの場合、幸いにも近くに姉が住んでいて、毎日のようにAさん宅を訪れては、家事や育児のサポートができていました。Aさんの夫も献身的にサポートしていましたが、平日の日中は仕事に出ているため、サポートできる時間がどうしても限られます。

今はコロナ禍の影響で在宅勤務が普及したため状況が少し変わってきているものの、現役世代の家庭では、日中に家族が家にいないことが多く、いざというときに頼れる人手がいないことも課題の1つです。AYA世代の在宅ケアは、公的制度ではなく、家族のサポートによってまかなわれているのが実態なのです。