これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。

たしかに返済を苦にして破産に至る人もいるが、お金という意味で言えば、「授業料の値上がり」「親側におしよせる、可処分所得の減少」「上がらない給料」など、ほかにもさまざまな要素が絡まっており、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しい。また、「借りない」ことがつねに最適解とは言えず、奨学金によって人生を好転させた人も少なからず存在している。

そこで、本連載では「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で、幅広い当事者に取材。さまざまなライフストーリーを通じ、高校生たちが今後の人生の参考にできるような、リアルな事例を積み重ねていく。

今回は趣向を変えて、貸与型ではなく、給付型の奨学金を活用した男性に話を聞いた。

「最近は給付型の奨学金をもらっている学生もそれなりにいる印象です。私もコロナ禍に入る前の1年生の終わり頃に、企業や財団など民間の給付型奨学金があることを、大学のポータルサイトで知りました。

当時は学費を両親に払ってもらっていましたが、少しでも家計の足しになればと思い、応募しました。サイトには40〜50もの団体の奨学金の募集案内が掲載されていて、それを目にしたときは『奨学金ってこんなにあるんだ』と驚きましたね」

本連載で話を聞いた多くは、社会人になってから返済が開始する、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金を借りた人たちだ。

しかし、返済不要の給付型奨学金を、企業や財団などから受けている人もいる。今回、話を聞いた関西の国公立大学に通う花田聖人さん(22歳・仮名)もそのひとりだ。

親は高卒、奨学金は必須だった

中京地方にある進学校の出身の花田さんだが、両親はともに高卒。それでも進学の意思は尊重してもらえたという。