組織作りは単に優秀な人材ばかり集めればいいわけではありません。社員が経営者の言うことを聞く気持ちがなければ会社は成り立ちませんし、表面的には指示に従っていても心にしこりがあればパフォーマンスは落ちてしまいます。

大手・中堅・中小企業約500社に対してコンサルティングを行い外部講演100回以上、研修講師400回以上という実績を持つ加賀隼人氏の『後継社長力』から、組織づくりのために必要なステップとつくった組織を実際に動かすステップを、3回にわたって紹介します(第3回)。

第1回 「長く勤めて、高給取り」古参幹部をどうすべきか
第2回 8割の社員が人事評価制度の結果に満足しない訳

会社の向かう方向を社員が不安に思う

カルチャーを明文化し、カルチャーに合った人事評価制度を導入、そしてカルチャーにフィットした将来の幹部候補が入社してくることで、少しずつ社内に変化が起こります。最たるものが、カルチャーにフィットしない人たちが居心地の悪さを感じ、徐々に退職者が増えていくことです。

人事評価と育成、補強という工程を3〜5年継続していくことで、ようやくイメージしていたカルチャーに会社が塗り替えられていく……。そのこと自体は喜ばしいのですが、その一方で、大量に人が辞めていくのを見て、残された社員たちの間には、不安感が広がっていきます。

「これまで会社を支えてきた上司や幹部さえも辞めてしまって、本当にこの会社は大丈夫なのか?」と、思い始めるわけです。

退職する古参の幹部や同僚たちは、辞めるに際して「もうこの会社は危ないよ」とか「沈みかけの船のようだ」「君も早く転職先を考えたほうがいいよ」などといった、ネガティブな言葉を耳打ちしたり、あるいは公言したりしているかもしれません。

本人は親切のつもりなのかもしれませんが、残った従業員や、胸を躍らせて中途入社した人たちにとっては、迷惑な助言でしかありません。せっかくカルチャーにフィットした人材が社内の大勢を占めるようになったにもかかわらず、社内の動揺を抑えることができず、生産性は落ちる一方となります。

経営者がこのタイミングで、何をすべきなのかをはっきり理解していないと、残された従業員たちさえ、「やはり辞めたほうがいいのでは?」という不安に支配され、辞めなくてもいい人まで転職先を探し始めることがあります。では、経営者が成すべきこととは何でしょう? それは、明るい未来を見せて従業員1人ひとりのモチベーションを上げることにあります。