羽田から飛行機で2時間弱の北海道紋別市。ここに日本唯一のアザラシ保護施設「オホーツクとっかりセンター」があります。同施設で10年にわたり保護活動をしてきた岡崎雅子さんにアザラシとはいったいどのような動物なのか、施設にいる個性的なアザラシたちとの思い出について聞きました。※本稿は『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』を一部抜粋し再構成のうえお届けします。

思いがけない出産

2018年3月20日、出勤すると血まみれのようちゃんが広場にあるアザラシが乗る台(キス台と呼ぶ)の前におり、その傍らで何かがモゾモゾ動いていた。それは、ふわふわのクリーム色の毛で覆われた、小さな小さなアザラシだった。もしかしたら……と思ってはいたが、まさか本当に生まれるとは! ようちゃんが赤ちゃんを出産していた。

現在は飼育頭数が増えたため休止しているが、とっかりセンターでは飼育個体数を維持するために繁殖も行っている。全身ホワイトコートの迷子のアザラシを保護することもある私たち飼育員にとって、アザラシのお母さんが実際にどのように子育てをするのか、間近で見て、勉強できる機会はとても貴重である。

ここでは、ようちゃんの子育てのなかから、私が驚いたり、感心したりしたことをお話しする。

まずは、赤ちゃんアザラシの本能についてである。赤ちゃんは飼育員が発見した数分後には、アザラシ広場に置いてある木の台の下の狭い空間に自ら隠れた。まだ天敵の存在も知らないような赤ちゃんが、特にお母さんに促されたわけでもないのに、10cmほどある段差を自ら乗り越え、そこへ隠れようと思ったのだから感心する。

赤ちゃんはその場所が気に入ったようで、おっぱいが欲しくなると木の台の下から出てきておっぱいをねだり、おなかがいっぱいになると木の台の下に戻る、しばらくはそんな生活をしていた。