あらゆる人が健康的に生きていけるようになるための食事とは? さまざまなダイエット法や真偽のほどが不明の健康情報が広がる現代において大切なのは、科学に基づいた厳然たる事実と、そうではない擬似科学とを選別できる情報リテラシーだ。

イギリスを代表する栄養士の1人であるリアノン・ランバート氏の著書で、最新の科学的知見から導き出される健康と幸福のための食事法を、トピックスごとにわかりやすく解説する『食事と栄養の科学大図鑑』より、ダイエットをめぐるいくつかの真実について一部抜粋、再構成してお届けする。(構成:黒澤彩)

「低炭水化物ダイエット」の落とし穴

過度なダイエットを繰り返したり、偏ったものだけを食べ続けたりする方法があまり体によくなさそうだということは知られている。では、「健康的にやせる」とはどういうことなのか?

いくつかのダイエット法には危険性がある。具体例を3つ挙げよう。

まず、炭水化物を極力とらないようにし、タンパク質の摂取を心がける「ケトジェニックダイエット」「アトキンスダイエット」「デュカンダイエット」などについて。メディアがもてはやしたことで広まったとしつつ、炭水化物さえ減らせばいいという考え方は大きな間違いだ。

メディアや一部の科学論文では、炭水化物は太る原因とされがちだ。活動度の低いライフスタイルの広がりによって、社会全体の炭水化物必要摂取量が減ったのは事実だが、それでも炭水化物がバランスのとれた食事の重要な一部であるのは変わらない。思い出してほしいのは、日本は肥満率が世界最低レベルだが、同時に炭水化物の消費量ではトップクラスだということだ。

・水分の減少
炭水化物から(グルコースの形で)得られたエネルギーは、グリコーゲンに変換され、将来使うために貯蔵されるが、その際にグルコースへの再変換に必要な水も一緒に貯蔵される。低炭水化物ダイエットではグリコーゲンの貯蔵量が減るので、それに対応する水も少なくなる。この分の急激な体重減少を脂肪の減少と勘違いすることが多い。

・食物繊維の不足
炭水化物の摂取を急に制限すれば、頭痛がしたり、便秘などの消化器系の問題が生じたりするかもしれない。炭水化物に含まれる食物繊維には、消化を助けたり、血糖値を安定させたりといったいくつかの健康効果がある。ケトジェニックダイエットでは多くの野菜や果物を食べないが、それは便秘の原因になる可能性があるし、腸内細菌に栄養を与えることで得られる長期的な健康効果を逃しかねない。