お金がいつかなくなる不安と対峙するためには、真面目に労働するしかない。そう考えていませんか?

しかし働く以外にも選択肢はあります。

石を売る、土を泥団子にして売る、魚を獲る、野草を食べる、断食するなど、お金が無くても生きていくことは可能なのです。

文筆家・脚本家、また、構成作家として多くの舞台、コントにも携わるワクサカソウヘイさんが、衣食住の呪いを解こうと体当たりで奮闘した記録『出セイカツ記 衣食住という不安からの逃避行』より、ワクサカさんが実際に体験した、経済にバグを起こすための「石とお金をめぐる冒険」全4回連載の第2回をお届けします。

第1回:スネ夫に憧れた男が金に困った末に辿り着いた道(11月29日配信)

善一さんからの贈り物

「おお、いいね。これは山みたいな形をしていて風流だ。お、こっちは船のような形をしていて、これも面白いね……」

私の拾ってきた石を書斎のテーブルの上に並べた途端、善一さんは顔を綻(ほころ)ばせ、石の世界へと没入してしまった。思っていた以上に、善一さんは石好きのご老人であった。私が「ほら、この石、気持ちいい手触りをしてるでしょ」などと自慢を投げかけても、適当なリアクションが返ってくるだけで、とにかく目の前の石たちを形で分類することに夢中になっている。

善一さんの書斎を見渡すと、ガラスケースにはたくさんの石たちが並んでいる。翡翠や蛍石などの鉱石や、化石、それに石を中国の山水画に見立てた置物など。聞けば何十年もかけて自分で採掘したり、マーケットで買ってきたりしたコレクションであるという。善一さんの「石好き」は、年季が入っているのである。

石の見た目の分類が一段落つくと、「まさかキミが石に興味のある者だったとは……」と善一さんは嬉しそうにお茶を差し出してきた。

「あ、いえ、べつにすごい興味があるわけではなく、今日たまたま石拾いに誘われて、ちょっとだけ石の面白さに気づいただけで……」

しかしそんな私の小声など善一さんは聞いてはおらず、いそいそとどこかの部屋に消えたかと思うと、新生児くらいのサイズ感の石を持って戻ってきた。

「はい、これ。生前贈与。『珪化木』っていう、まあ平たく言えば樹の化石ね。私もさ、そろそろ死ぬ前の整理をしなきゃいけないし、この石たちもどうしようかと思ってたんだけど、いやいや、キミみたいな石が好きな親戚がいてよかった」

ワクサカソウヘイさんが善一さんからもらった珪化木 ワクサカソウヘイさんが善一さんからもらった珪化木

……え?

「まあ、ゆっくり譲っていくことにするよ。とりあえず、今日はこの『珪化木』ね」