「お店が満席になったのは3年ぶり。前回はコロナ前の忘年会だったかなあ。旅館にはお客さんが戻ってきたけど、スナックには足を延ばしてくれない」

11月下旬の週末、長野県千曲市の戸倉上山田温泉でスナック「ちあーず」を経営するまさえママは、同市観光局が企画したスナック巡りの参加者で埋まった店内を見渡し、「楽しんでもらって、また来てくれたらうれしい」と声を弾ませた。

昭和中期に芸者400人を擁し、「不夜城」と呼ばれるほど賑わっていた同温泉街は、今も狭い路地にスナック約80軒がひしめく。だがコロナ禍で打撃を受け多くが開店休業状態にある。信州千曲観光局は昭和好きの女性や若者をスナックに集め、令和のネオン街としてよみがえらせるプロジェクトに着手、11月下旬には20〜40代の参加者を募りモニターツアーを実施した。

戦後に「歓楽街」として名を馳せる

長野市と軽井沢の中間に位置する戸倉上山田温泉――中高年の男性なら、その名前に懐かしさを感じるかもしれない。明治時代から善光寺詣での精進落としの湯として栄えた同温泉街は、戦後に全国有数の歓楽街として名を馳せた。

モニターツアーで訪れたスナック(写真:筆者提供)

「うちの野球部はイケメンぞろいだったから、彼らを目当てに(ストリップ劇場の)ロック座の踊り子さんが仕事後に店に来たのよ」そう話すのはちびくろ&らぶの大ママだ。1980年代初めにキャバレーを改装してスナックを開業して以来、街の栄枯盛衰を見てきた。

「開業するときに金融機関に借りた400万円は、10カ月で返済した。忘年会シーズンはお客さんが4回転し、一晩で250人が押し寄せたのよ」

バブル全盛期の1990年ごろには店の客で野球部を結成し、スナックの名前を入れたユニフォームも作った。