ものを書く機会が多いせいか、筆者は日ごろから掲示や印刷物などの表記がつい気になってしまいます。よく丸ノ内線を利用するのですが、電車に乗りながら「『丸ノ内線』はカタカナの『ノ』を使って表記するのに、『丸ビル』はひらがなで『丸の内ビルディング』なんだなぁ……」とか、「隣り合う『四ツ谷駅』と『四谷三丁目駅』で『よつや』の表記が違うのはなぜだ?」などと考えてしまいます。

「つくづく日本語って難しいね」なんてひとりぼやくことも多いのですが、先日はローマ字表記に目が行きました。

東京駅の駅名標、丸ノ内線ではTokyoなのに、JRではTōkyōと書かれているではないですか! ローマ字表記での長音の表し方には正式なルールがあるのでしょうか。

いい機会なのでいろいろと調べてみたのですが、何やらローマ字には複雑な事情がある様子。このローマ字問題、ちょっとだけ一緒に考えてみませんか。これからはきっと、皆さんもローマ字が気になってしまうかも……。

ヘボンはヘプバーン?

調べてみてわかったのですが、ローマ字の表記法にはいろいろなスタイルがあるようで、これらが混在して使用されているのが現状のよう。どうやら日本におけるローマ字の成り立ちが影響したようなので、簡単に説明します。ここでは、2005年の『国土地理院時報』の108集に掲載されていた「地名のローマ字表記」の中の「ローマ字表記の歴史」を参考にさせていただきました。

日本で初めてローマ字が使用されたのは1549年にフランシスコ・ザビエルがキリスト教の布教を始めたときのようです。このころはポルトガル語やイタリア語の発音に即したローマ字が使用されていたとのこと。ところが、1613年に始まったキリスト教弾圧により、このローマ字は消滅したそうです。

江戸時代半ばに洋書が解禁されると、幕末にかけては蘭学が盛んになってきます。すると、オランダ語やドイツ語に即したローマ字が使われるようになったそうなのですが、これは標準化されることはなく一部の人々が使用するにとどまったようです。

その後、1867年(慶応3年)にアメリカ人宣教師のJames Curtis Hepburnが「A Japanese and English Dictionary with an English and Japanese Index(和英語林集成)」の中で、子音は英語、母音はイタリア語(ラテン語)を基本にして作成したローマ字を使用します。これが、現在使用されているローマ字の1つで、「ヘボン式」と呼ばれているものです。