「補償がまったくない環境で夏休みの旅行シーズンに緊急事態宣言が出され、旅行会社は大変苦境に立たされている」――。緊急事態宣言の発出を受けて、日本旅行業協会の菊間潤吾副会長は強く訴えた。

7月12日から8月22日まで、東京都は実に4度目となる緊急事態宣言に入っている。度重なる宣言で、旅行会社は春休み、ゴールデンウイークに続き、夏休みシーズンの需要も失うことになった。

コロナ禍では県外や遠方への旅行は難しく、車で2〜3時間程度で行けるリゾートホテルなどに家族で旅行する「マイクロツーリズム」が増えている。ただし、旅行会社への恩恵は少ない。「顧客がホテルを直接予約するなど、旅行会社を利用しないケースも多い」(読売旅行の坂元隆社長)からだ。電車や飛行機など交通手段と宿泊施設をセットにして販売するには、ある程度遠方への旅行が必要になってくる。

コロナ対策の負担は大きい

実際、足元の旅行会社は低調な推移だ。主要旅行業者の取扱額(観光庁調べ)は、4月に623億円となり、これは2019年の同月比でわずか14.8%。5月も414億円と同9.8%に終わった。また、JTBは今年の夏休み(7月20日〜8月31日)期間の国内旅行人数を4000万人と推計している。これは2019年の同期間との比較で44.8%減、2020年比でも5.3%増にとどまる。旅行期間も1泊の旅行が4割を占めるという。

こうした中、日本旅行業協会では参加人数を大幅に絞り、バスや食事会場でのソーシャルディスタンスの維持、PCR検査や検温の実施など、感染対策を徹底したツアー実験を行っている。ただし、こうしたツアーは旅行会社、旅先のホテルとも実務面の負担は大きい。安心・安全のツアーを提供することも容易ではなさそうだ。

ホテルも同様に苦しい状況にある。業態別の客室稼働率(観光庁調べ)を見ると、5月の客室稼働率は27%にとどまる。最悪期を脱しつつあるようにも見えるが、本格回復は遠く、特に都市部にあるシティホテルの下落幅は大きい。昨年の夏休みは「第2波」が到来した影響があったが、今年も宣言発出と首都圏の感染者数の多さはネックになりそうだ。