クルマのボディカラーは白、黒、グレー、シルバーの無彩色がほとんどを占めますが、有彩色のなかで最も多いのは「青」というデータがあります。世界的にシェアを伸ばしている青、その火付け役はEVなどの新エネルギー車です。

有彩色で人気の青 「クリーンさ」「先進性」表現

 クルマのボディーカラーで多いものといえば、白、黒、グレー、シルバーの無彩色ですが、有彩色のなかでは、青の人気が高まっているようです。

 自動車用塗料を製造するドイツのBASFが2020年1月に発表したレポートによると、2019年に世界で製造された新車のうち有彩色が使われている割合は22%で、青が全体の9%と最も多いそうです。なかでもEMEA(欧州、中東、アフリカ地域)では青の割合が11%と高く、シルバーの10%を上回っているほか、日本では青、シルバーともに9%で同率となっています。

 BASFジャパンのカラーデザイナーである松原千春さんによると、青は2010年代中盤から拡大傾向にあるそうです。その背景を次のように説明します。

「自然を連想させるさわやかな空や海のイメージと、クリーンなテクノロジーのイメージから、国内外の自動車メーカーがHV(ハイブリッド車)やEV(電気自動車)のアイコンカラーとしてブルーを使ってきたことも、人気につながっているでしょう」(BASFジャパン 松原千春さん)。

 確かに、2010年代前半に登場した日産のEV、初代「リーフ」や、ホンダ「フィットEV」のほか、トヨタ「プリウスPHV」や「MIRAI」なども青がイメージカラーに使われています。初代「リーフ」で青を前面に打ち出したことについて、日産は次のように話します。

「もともと2009(平成21)年にカルロス・ゴーン元社長が、その後の電動化技術搭載車に、青いエンブレムを使用すると決めました。『青い地球を次世代に引き継いでいく』というイメージのもと、環境に優しい色として青を使っています」(日産)

 日産に限らず、EVやHVなどはエンブレムにも青が多用されています。BASFジャパンの松原さんによると現在、特に中国では新興のEVメーカーがブランドカラーとして青を採用するケースが多く、クリーンなイメージと先進性を表現しているそうです。

軽自動車から高級車まで「青」花盛り

 日産によると、現行の2代目「リーフ」では色のラインアップもより広がり、青をイメージカラーに据えてはいないそうですが、どの車体色でも屋根やバンパー下部、フロント部など随所に青の差し色が見られます。BASFジャパンの松原さんは、「日本市場では環境配慮車が珍しいものではなくなり、色の設定もガソリン車と変わらなくなったものの、ブルーが本来もっているクリーンなイメージは続いています」といいます。

 また、EVなどの新エネルギー車に限らず、青は幅広い車種で人気が高まっており、日本においてはホンダ「フィット」「N-ONE」「N-WGN」、トヨタ「アクア」など、販売台数の多いクルマにおける青のヒットが人気に貢献しているとのこと。

 ホンダは、2017年から3年連続で新車販売台数首位の軽自動車「N-BOX」でも、色別ではイメージカラーに据えた「モーニングミストブルーメタリック」が白、黒に続き3番目に売れているそうで、「有彩色のなかでは販売台数が多く、お客様へ訴求している色が受け入れられている」と話します。

 このほか、レクサスなどの高級車でも、次々と新しい表現の青が打ち出されているとBASFジャパンの松原さんは話します。また、ポルシェをはじめ、スバルやフォルクスワーゲン、フォードなどが、スポ―ツカーにソリッドな(単色でベタっとした)水色に近いミディアムブルーを打ち出す傾向もあるそうです。

「ピンクの人気が落ちてきた」青が受け入れられる理由

 ここまで青が人気を得た理由について、BASFジャパンの松原さんは次のように話します。

「ブルーはもともと、年齢や性別を問わず好まれやすい色です。世界的にレッドの人気がピークを過ぎたので、次の有彩色としても受け入れられているのでしょう。加えて着色顔料やパール顔料の開発により、水色のような明るいものから、鮮やかなもの、深みのあるものまで、表情豊かな質感が表現できるようになったことも、青の人気を支えていると思います」(BASFジャパン 松原千春さん)

 また日本では、軽自動車やコンパクトカーで一定の比率を占めていたピンクが数年前から減少し、総体的に青の人気が高まっている傾向があるといいます。

「世の中の風潮と合わせて、女性的なカラーを好む女性が少なくなってきたと言えるかもしれません。『ホワイトやグレーではない色のついた車に乗りたいけれども、かわいくなりすぎない色』として、女性も選びやすい色がブルーなのでしょう」(BASFジャパン 松原千春さん)

 BASFジャパンの松原さんはまた、「塗装技術の向上だけでなく、目まぐるしく変化する環境のなかで、特徴あるデザインを受け入れ、楽しむユーザーが現れてきたのだと思います」と話します。

 ちなみにBASFによると、世界のなかで青の需要がとりわけ低いのが南米で、赤8%に対し、青はわずか2%です。インドなども同様に赤のほうが人気が高く、これら地域では、より鮮やかな色が好まれるそうです。