消防車両としては全国唯一の「トイレカー」が、目覚ましい“活躍”をしているようです。消防の現場だけでなく様々な現場で導入が進むトイレカー、背景には社会の変化と、切実な問題がありました。

超レアな消防車「トイレカー」とは

 はしご車、ポンプ車をはじめ消防車両は様々な種類がありますが、なかでも珍しいものとして「トイレカー」が挙げられます。

 トイレカーは2021年4月に東京消防庁が神田消防署に導入しました。活動支援などで活用される「指揮統制車」などにトイレを備えた車両はありましたが、トイレ機能に特化した消防車両は、全国でこの1台と言われています。

 消防士の方に話を聞くと、消火作業が一段落し、ほっとした瞬間、尿意が高まってくるんだとか。ところが、近くに公園や公衆トイレがあればいいのですが、ない場合はけっこう悲惨です。商業施設や民家のトイレを借りるという選択肢もあるものの、消火活動後なので、足元はずぶ濡れ、服はススなどで真っ黒、借りるのには相当の勇気が必要となります。結局、署に帰るまで我慢してトイレに駆け込むケースが多いとのこと。

 そうした状況のなか導入されたのがトイレカーでした。トラックの荷室の中央に男性用スペースとして小便器2基と個室2室を配置。後方には施錠可能な女性専用の更衣室兼個室も設けられています。女性用は男性用と壁で完全に仕切られ、入口も別です。

 この1年間でのトイレカーの出動実績は40件以上。昨年夏、静岡県熱海市に大きな被害をもたらした大規模な土石流の際にも出動し、消防関係者を連日バックアップしました。ちなみにタンクの容量は、100人が3日間用を足せるくらいだとか。

 隊員からは「現場では極力水分を控えているが、いつでもトイレに行けるというのは心強い」などの意見が寄せられているそうで、現在、多摩地区に2台目の配備を検討中だそうです。

国交省じゃ入札で原則化 トイレカーが各方面で注目のワケ

 東京消防庁のトイレカーが女性専用の更衣室兼個室も備えているように、導入の背景には、女性の消防職員や消防団員の増加があります。消防の現場に限らず、女性の活躍の場が広がることで、仮設トイレ(トイレカー)はますます市場拡大が見込まれます。

 代表的なのが建設の現場です。国土交通省も、女性にも働きやすい建設現場、男女ともに働きやすい環境を目指す取り組みを推進していて、入札の際にも、女性が快適に使える仮設トイレの導入を原則化しているそうです。

 国土交通省はこのトイレのことを「快適トイレ」と称し、様々な条件を課しています。例えば、臭い逆流防止機能、容易に開かない施錠機能、周囲からトイレの入口が直接見えない工夫、サニタリーボックス、鏡付きの洗面台など。さらに推奨する仕様、付属品として、擬音装置やフィッティングボードなども挙げられています。

 さらに、災害に備え自治体でもトイレカーを導入するケースが増えています。ここでも、一般的な仮設トイレに比べ臭いも少なく清潔で、鏡や洗面台などもあることから、特に女性から多くの支持を集めているようです。

 この動きに呼応するかのように、ホテル並みに豪華なトイレカーも登場しています。ウォシュレットにベビーチェアー、洗面所、さらにエアコンまで装備したものが、ドラマのロケ現場などでも活用されています。これからもますます需要拡大が見込まれるトイレカー、その進化に注目です。