新型コロナ禍、乗客を乗せず床下に貨物を積んで運航を続けるJALグループのLCC「ジップエア」。このユニークな運航を続けるのは売り上げを立てるだけではなく、計画中のホノルル線就航にもつながる理由がありました。

遅ればせながらも成田〜バンコク線、〜ソウル線も開設

 国内線、比較的近距離の国際線がメインの日本のLCC(格安航空会社)市場。JAL(日本航空)グループの「ジップエア(ZIPAIR Tokyo)」は、日の丸LCC初となる「国際線中長距離」にあたる地域への就航を掲げ、2020年にデビューした航空会社です。

 ところが新型コロナウイルスによる国際線需要減退の影響で、経営計画に大幅な変更を強いられています。当初は2020年5月に成田〜バンコク線、7月に成田〜ソウル線を開設する予定だったものの、これらは見直しを余儀なくされます。

 結果、保有するボーイング787型機は旅客機ながら、乗客ではなく貨物を乗せるというユニークな形態で、計画から遅くなったものの当初の発表どおり、成田〜バンコク線、成田〜ソウル線を開設しました。とはいえ、これらの路線を飛ぶ便も貨物はあくまでも胴体下の貨物スペースのみで、客室には積みこまないとのこと。胴体下の貨物スペースのみだと、運べる量は少なくなりますが、なぜこの状況下でも、ネットワークを広げるのでしょうか。

 もちろん航空会社は飛行機を飛ばさないと売り上げがないので、需要が高まる貨物便でそれに対応したいというのはあるでしょう。ただジップエアの場合、それだけが理由というわけではないようです。

ジップエア ホノルル線展開への最も大きな壁とは

 ジップエアが、乗客がゼロでも成田〜バンコク線や成田〜ソウル線に飛行機を飛ばす理由、そこには冬ダイヤ初日となる10月25日(日)から開設する成田〜ホノルル線、そしてその先の北米線展開を見据えているからでしょう。

 とはいえ、ホノルル線についてはアメリカ運輸省などの認可はすでに降りているものの、実はまだ太平洋を越えて、アメリカへ行き来する国際線を飛ばすには、越えなければいけない壁があります。

 ジップエアが保有するボーイング787型機は、エンジン2発の「双発機」です。かつて双発機は、洋上を長時間通る国際線フライトは許されていませんでした。というのも、かつて一般的だった4発機と比べて、まわりに空港がない洋上エリアで、エンジンが片方止まってしまった場合のリスクが、3発機や4発機と比べて大きいからです。

 ただ、近年はエンジン1発あたりの出力や信頼性が向上したこともあり、一定条件を満た場合に限って、いわば例外的にそういった区間での飛行を認めるようになりました。これが双発機による長距離進出運航距離、通称「ETOPS(イートップス)」です。

「ETOPS」には細かな規制が設けられており、たとえばエンジン1発で330分間飛べる、と想定される場合は、「ETOPS330」といったように表されます。

「ETOPS」は、国際民間航空機関(ICAO)が取り決めをしているものの、日本国内における「ETOPS」は、航空会社ごとに国土交通省が定める基準を満たし、認可をうける必要性が生じます。

ジップエア社長に「ETOPS」の現況を聞く

 ジップエアが保有するボーイング787型機は、JALやANAなどのいわゆる国内の老舗航空会社でも長距離国際線で用いられていますが、出来たばかりのジップエアは、先述のとおり同じ型式を持っていても、既存の航空会社と同じように、ETOPSが自動的に付与されるわけではありません。国土交通省から認可を受けるには、便を運航し実績を積み、“お墨付き”をもらう必要があるのです。

 ジップエアの西田真吾社長は、自社機体の「ETOPS」の現況について、次のように答えています。

「いろいろな手続きがありますが、いまのところ取得まで順調に進んでいます。10月のホノルル線就航には、間に合うと思います。取得ができるかどうかは当局の判断次第ですが、機首部分に『ETOPS』の文字を入れる準備はできています」

 このほか、前出の特殊な貨物便を運航することによって、CA(客室乗務員)の教育ができるというメリットもあるそう。ソウル線就航日となった9月12日(土)も、フライト中、客室でCAの訓練が実施されていました。