東急が田園都市線沿線を中心に、新たな移動・生活サービスの実証実験「DENTO」を実施します。新型コロナで崩れた鉄道のビジネスモデルを大きく転換するための布石。グループ総力戦で臨む構えです。

田園都市線沿線から通勤高速バス、都心から自宅へ通勤ハイヤー運行

 東急が2020年11月12日(木)、田園都市線を中心に「DENTO」と題した新サービスの実証実験を2021年1月から行うと発表し、国土交通省で記者レクチャーを実施しました。新型コロナウイルスで大きく変容した、都心通勤者の移動・就労ニーズに対応する実証実験、としています。

 東急線の通勤定期券を保有する人向けに、主として次のようなサービスを提供するといいます。

●移動サービス
・通勤高速バス:多摩田園都市地区と東京都心を往復。車内Wi-Fi完備。
・通勤相乗りハイヤー:都心勤務地(港区、中央区、渋谷区)から横浜市青葉区内の自宅まで運行。※

●沿線の自宅周辺でのテレワーク環境の提供
・東急グループのシェアオフィス「New Work」に加え、東急グループのスポーツ施設や商業施設でもテレワーク可能に。たまプラーザ、あざみ野、青葉台、南町田エリアで実施。

●移動の目的、および体験価値の提供
・東急線ワンデーパス、東急バス1日乗車券を1回100円で提供(利用回数制限あり)。※
・大井町駅周辺の飲食店との連携による特別メニューの提供と、都心地区から店舗までのハイヤー送迎サービス。※
・東急グループの沿線施設割引クーポン配信(商業施設、スポーツ施設、映画館施設、大井町駅周辺の商店街)。※

 なお、※は通勤定期券保有者限定のサービスです。これらを、「LINE」を通じて提供し、商品選択や決済もそのなかで完結。現地では予約・決済画面などを係員に提示する形で利用できます。

「リモートワークの進展により、どこでも仕事ができるようになっています。高速バスはシェアオフィスの感覚で利用していただけますし、スポーツ施設で汗を流す傍ら、仕事をすることもできます」(東急 MaaS戦略担当課長 森田 創さん)

 移動量が減った沿線の都心通勤者へ、多様な移動と就労手段を提供するとともに、「移動したくなる仕組み」をつくるのが目的とのこと。従来の東急のビジネスモデルを大きく転換する、グループ総力を挙げての取り組みだといいます。

事業モデル「崩れつつあるのは間違いない」

 東急の事業モデルは、沿線の宅地開発を行い、自宅からバスを使って駅へ、そこから東急線で勤務先へ――というものでしたが、新型コロナとリモートワークの進展で、それが「完全にではないが、崩れつつあるのは間違いない」(東急 森田さん)といいます。

 なお、電車の乗客は前年と比べて8割弱は戻っているものの、通勤定期代の支給をやめた企業も多く、鉄道会社にとっても大きな収入源である通勤定期のメリットが薄れているとのこと。そこで、「移動サービスと生活サービスをシームレスにつなげる実験」を行うということです。

 なお、通勤高速バスや通勤ハイヤーの運賃は検討中とのことですが、後者については相乗りということもあり、東京都心部から横浜市青葉区まで1人あたり2000円前後を想定しているといいます。このハイヤーなど通勤定期券保有者限定のサービスで有効な定期券は、東急線の通勤定期であれば1区間でも、1か月でも対象だそう(期限切れの場合は利用不可)。

 今回の取り組みは、いわゆる「MaaS」のひとつですが、東急線や東急バスの1日乗車券を100円で提供する点なども、記者からは「大胆だが採算はとれるのか」といった質問が出ました。森田さんは、確かに「儲からない」としつつ、今後の「見極め」をするうえで意味がある事業だと話します。

 その狙いは、小さい移動需要を喚起しながら、データを蓄積し、よりよい街づくりに活用していくこと。鉄道も含めたハードありきのビジネスモデルから、より柔軟な形へと転換していくビジョンを持っているそうです。