2021年は無観客開催となった「箱根駅伝」、その100km以上にもおよぶコースを、路線バスでたどってみました。バスの座席からランナーの気分でコースを「走って」みましょう。3区から5区は、長い徒歩区間や、バスの「山の神」も待っています。

自然と戦う後半戦 バスで追体験!

 毎年1月2日、3日に開催されている「箱根駅伝」。往復217.1kmにも及ぶコースは、ランナーの通過に合わせて順次規制されますが、それ以外の時間帯なら当日でもコースの大半を路線バスでたどることができます。

 今回は後半、3区(復路8区)から5区(同6区)までの、考えられる乗り継ぎルートの一例を紹介しつつ、名場面をたどります。

【3区/8区】ランナーもバス乗り継ぎも「冷たい海風」に注意!

・区間:戸塚中継所(横浜市戸塚区)〜平塚中継所(神奈川県平塚市)、21.4km
・大会区間記録:3区/59分25秒、8区/1時間4分24秒

●乗り継ぐバス路線
(戸塚中継所〜新道大坂上500m徒歩)
・神奈中バス「戸81」新道大阪上〜相生町
・江ノ電バス「藤04」相生町〜辻堂団地
・江ノ電バス「J01」辻堂団地〜浜須賀(本数僅少)
(浜須賀〜茅ヶ崎ゴルフ倶楽部近辺〜ヘッドランド入口 1.5km徒歩)
・神奈中バス「茅09」:ヘッドランド入口〜茅ヶ崎駅入口(一方向の循環系統のため逆方向のバスに乗車し回り込む。徒歩の場合約550m)
・神奈中バス「茅37」:茅ヶ崎駅入口〜西浜高校前
(西浜高校前〜湘南大橋〜高浜台 約3km徒歩)
・神奈中バス「平14」:高浜台〜なぎさプロムナード
・神奈中バス「平15」:なぎさプロムナード〜八間通り入口
(八間通り入口〜花水川橋〜平塚中継所 1.4km徒歩)

 過去には2020年現在のフルマラソン日本記録保持者である早大・大迫 傑(すぐる)選手(2013年3区)も走ったこの区間は、横浜の山岳部から一気に平地へ降りていきます。バスで移動する分には富士山や海岸線の東海道松並木などの景色を楽しめますが、ランナーにとってこの区間は、遊行寺坂近辺のアップダウンや海岸線の冷たい風が襲いかかり、低体温との戦いです。

 そしてこの区間、特に藤沢市辻堂団地から平塚方面にかけての海沿いは、バスも過酷な乗り継ぎが続きます。地域のほとんどのバス路線は、北側にある東海道線の駅から海岸線手前をテニスラケットの先端のようにひと周りして戻る系統が多く、かつ海側には人家そのものがないため、路線も途切れがちです。冬の相模湾からの海風は冷たく、相模川や花水川の河口周辺で徒歩を余儀なくされるため、万全の防寒対策で乗り継ぎに挑んだ方が良いでしょう。

 目指す平塚中継所は平塚市の西端を流れる花水川の河口近くにあります。海沿いルートからは外れてしまいますが、平塚駅から出ている平40系統の終点、西海岸バス停が平塚中継所の最寄りです。中継所のすぐ横にはファミリーレストラン(ガスト平塚大橋店)があるので、4区の旅に備えて冷えた体をコーヒーなどで温めるとよいかもしれません。

【4区/7区】戦闘力53万のフリーザ様、押切坂に登場?

・区間:平塚中継所(神奈川県平塚市)〜小田原中継所(神奈川県小田原市)、20.9km
・大会区間記録:4区/1時間00分30秒、7区/1時間1分40秒

●乗り継ぐバス
(平塚中継所〜東町3丁目 約300m徒歩)
・神奈中バス「平39」:東町3丁目〜大磯局前
・神奈中バス「平46」:大磯局前〜二宮駅南口
・神奈中バス「二30」:二宮駅南口〜押切
・神奈中バス「二46」:押切〜国府津駅
・箱根登山バス(小田原駅行き):国府津駅〜市民会館前
・箱根登山バス「H」:市民会館前〜風祭

 海岸線から少し内陸寄りの東海道を走るこの区間は、本数が少ないものの順調にバスを乗り継ぐことができます。なので少し寄り道。SNSを見ながら観戦されている方にはおなじみの「あの坂」へ立ち寄ってみましょう。

 平塚中継所から9kmほど小田原側にある「押切坂」(二宮町)は、マンガ「ドラゴンボール」などのコスプレをした一団の応援で知られ、その登場人物からこの坂が「フリーザ坂」と呼ばれるほどに定着しました。この場所は押切坂上バス停(押切バス停の一つ手前)からすぐの場所ですが、江戸時代から東海道の難所として知られた場所だけあって、歩くだけでも息が切れそうな急勾配が続きます。坂の中腹で立ち止まり、タイヤをきしませながら通過するバスを眺めるだけでも、なかなかの迫力を味わえます。

 小田原市内では、小田原城の周囲に2か所の直角カーブがあり、その先で2006(平成18)から2016年まで中継所となっていたメガネスーパー営業本部(旧・本社)近辺を通過します。現在の小田原中継所は、そこから2.5kmほど先、箱根登山バスの風祭バス停前にある「鈴廣かまぼこの里」駐車場です。日本酒やワインとともに小田原名物のかまぼこを楽しめる施設でゆっくり休んで、このあとに控える天下の険・箱根に備えたいところです。

【5区/6区】「山の神」よりやや速い?路線バスで箱根越え

・区間:小田原中継所(神奈川県小田原市)〜芦ノ湖(神奈川県箱根町)、20.8km
・大会区間記録:5区/1時間10分25秒、6区/57分17秒

●乗り継ぐバス
・箱根登山バス「H」:風祭〜箱根町港

 小田原市から峠を越えて箱根町・芦ノ湖湖畔に至るこの区間は、順天堂大・今井正人選手(2004〜2007年5区)、東洋大・柏原竜二選手(2009〜2012年5区)、青山学院大・神野大地選手(2014年6区、2015・2016年5区)など数々の「山の神」を生んだ、言わずと知れた峠越えのコースです。

 ほぼ同じルートを走る箱根登山バスH系統は、相当する区間(風祭〜箱根町港)の走行に1時間程度を要しますが、この区間の記録は往路5区で1時間10分25秒、復路の6区で57分17秒。864mもの高低差をクリアしながらバスと遜色ない記録を出す箱根駅伝のランナーに、やはり「神」と呼びたくなる凄さを感じてしまいます。

 ただこの区間は片側1車線の急な峠道が続き、バスにとっても対向車どうしのすれ違いにヒヤッとする難関です。そして観光シーズンにはバス運行の頻度も高く、途中の箱根湯本駅には無線を持った関係者がバス乗り場に立って「つぎ〇〇号車、箱根町港行き入って、そのあと〇〇号車スタンバイ!」と続行運転の指示を出しています。激しい口調での無線の使い方とその後の運転手への気遣いぶりは、さながら競走中の選手にスピーカーで指示を出す監督のようです。

 路線バスで5区の見どころを巡るなら、2014(平成26)年まで駅伝のコースとなっていた重要文化財のトンネル・函嶺洞門(最寄バス停;箱根登山バス「塔の沢」)や、中継カメラの定点としてよく名前が出る温泉施設「箱根小涌園ユネッサン」(最寄バス停;箱根登山バス「ユネッサン」)周辺を歩くのも良いでしょう。

 箱根峠を越えて神社の大鳥居をくぐり、バスは往路ゴール地点の目の前にあるターミナル「箱根町港」に到着します。ランナーはここから他の選手の応援のため帰っていきますが、この場所からは静岡県・三島方面に向かうバスや、芦ノ湖の対岸・桃源台方面へ向かう遊覧船に乗り継ぐことができます。まずは目の前にある「箱根駅伝ミュージアム」で、間もなく100周年を迎えるその歴史を感じていきましょう。

※誤字を修正しました(1月3日15時40分)。