新幹線「ドクターイエロー」のごとく、空の世界にも、航法援助機器の点検に飛び回る国交省の「チェックスター」がいます。またの名を「ドクター・ホワイト」とも呼ばれる機体、その長い歴史を見ていきます。

拠点は中部空港

 2021年3月、ロールズ・ロイス製のダート・エンジンを搭載したYS-11の引退フライトが航空自衛隊入間基地で実施されました。この機体は、航空自衛隊が自衛隊管轄の空港において、飛行しながら管制機器の作動確認を実施するためのいわゆる「フライト・チェッカー(飛行検査機)」として運航された飛行機です。

 航空機は、出発から到着まで、多くの管制機関の援助を得て飛ぶことが一般的です。それを支援するため、たとえば自機の位置を測定するための無線基地や、空港から見た方角、滑走路の進入路への進入角や方向が適正であるかを示す装置をはじめ、パイロットの運航を助ける多様な航法援助機器があります。こういった機器は、精度が一定以下になると、航空機の安全運航に支障が生じてしまいますので、定期的な検査および整備が必要となります。

 空港内の灯火などについては、自動車などの地上走行による検査で代替できますが、とくに航空機の場合は、平面だけでなく、高低、つまり垂直方向の精度も重要であり、実際に航空機を使用しての検査が不可欠となります。これを実施するのが「フライト・チェッカー」です。

 日本国内の飛行場や空港には、防衛省管轄、そして国土交通省管轄のものが存在し、それぞれが航法援助施設の維持を担当しており、それぞれがフライト・チェッカーを運航しています。冒頭で紹介した空自のYS-11は前者にあたるわけですが、後者のものは、どういった飛行機が対応しているのでしょうか。

 国土交通省が運航するフライト・チェッカーは、管制官とパイロットが無線交信する際のコールサインでは「チェック・スター」で、この名が現行の機体にも公称にもなっています。

 かつては、羽田空港を基地としていましたが、2015(平成27)年から中部空港にその拠点を移しました。機体に装備されているアンテナなどは通常の旅客機と同じであるものの、その機内は、受信した各種の電波の情報を解析、保存する装置で満杯です。

チェック・スターはどんな機体?

 チェック・スターは、旅客機のように100席以上を搭載できるような巨体は必要ありませんが、機体が小さすぎると解析装置が搭載できないため、ある程度の大きさが求められます。

 2021年現在、国土交通省では、2種のチェック・スターを使用しています。ANA(全日空)グループなどで旅客機として導入された実績をもつターボプロップ機、ボンバルディア(現デ・ハビランド カナダ)DHC8-Q300と、セスナ社のサイテーション・ビジネスジェット機です。

 チェック・スターの元祖となるのは、1961(昭和36)年のダグラスDC-3型機でした。その後、三菱重工製のMU-2や YS-11が採用されたのち、ガルフストリーム社やボンバルディア社のビジネスジェットへ更新。それ以後は運航経費を抑えられるターボプロップ双発機が運用されるなどの経緯をたどり、現在の2モデル体制に至ります。

 実は現在のチェック・スターは、新幹線が高速走行する軌道や架線の安全性を検査する「ドクター・イエロー」に引っ掛け、一部では「ドクター・ホワイト」の愛称で呼ぶ人も。その名の通り白ベースのデザインが採用されています。ただ、かつては、機体が目立ちやすいよう、蛍光オレンジが尾翼と機首にあしらわれていました。

 ちなみに、飛行検査機は先述のとおり現役の空港機能の検査が重要な任務ですが、新しく開港した空港における航法機器の検査も担います。したがって、通常その空港の飛来一番機はフライト・チェッカーとなるわけです。そのため、成田空港(当時は新東京国際空港)ではYS-11が一番機となりました。

 新幹線の「ドクター・イエロー」は、見るとラッキーなことがあるもいわれますが、「ドクター・ホワイト」、つまりチェック・スターでは、そのような話は残念ながら聞いたことがありません。ただ、この機もまた、空港や旅客機の安全を支えている大切な飛行機といえるでしょう。

【ちなみに】チェック・スターはすごくカオスな航路を描く