首都高都心環状線の一部を地下化し、日本橋川上空の高架橋を無くす工事が、現在進められています。新ルートはどのような形になるのでしょうか。地中に無数の構造物が埋まっているなか、まさに針の穴に糸を通すような作業が進められています。

2040年までに「青空が復活」

 首都高速道路が2021年6月30日(水)、C1都心環状線で進めている日本橋区間の地下化工事を報道陣へ公開しました。日本橋川を覆うように延びる都心環状線の江戸橋JCT〜神田橋JCT間1.8kmを地下に移設し、現在の高架橋を撤去、「日本橋に空を取り戻す」というプロジェクトです。

 工事にあたっては「立体道路制度」を採用し、ビルなどの地下にトンネルを通過させます。沿線の再開発事業と一体的に工事を行うことで、空間に制約のある東京都心において、用地確保と建設工程をスピーディを進めることができます。大阪では同じ制度を活用し、阪神高速池田線が梅田付近で「ビルを貫通」する形になっていますが、その地下版と言えます。

 事業区間の構造について、東側から見ていきます。箱崎方面から続く高架橋は、江戸橋JCT付近で6%の勾配で一気に地下へ潜ります。日本橋川の北側から南側へルートを変えますが、その川を横切る地点が、ちょうど日本橋の真下です。そこから最大深度20mで八重洲・大手町の再開発地区を抜け、そのまま地下で首都高八重洲線と合流、既存の八重洲線のルートでJRと新幹線の下を抜けたあと地上に顔を出し、神田橋JCTに取り付きます。なお、この事業に伴い都心環状線の江戸橋出入口と呉服橋出入口は、2021年5月に廃止されました。

 トンネルは、日本橋周辺でシールド工法、常盤橋の周辺で開削工法を採用。まずは今後3年で、先行して廃止された2つの出入口の高架橋の橋脚や基礎を除去していきます。これにより日本橋川の河川断面を増加させ、その分だけ水位を下げ、工事をしやすくします。

 その後は地下トンネルの建設を進め、2035年に供用開始。さらに2040年までに高架橋を完全撤去し「日本橋川に青空が戻る」というスケジュールになっています。

 首都高の担当者いわく、この地下トンネルのルートは「針の穴に糸を通すようなもの」。地下埋設物だらけの東京の街で、一番の困難は既存の地下鉄の存在です。銀座線とは離隔2.3m、半蔵門線とは離隔わずか1.1mという位置で隙間をすり抜ける形になっています。

生まれ変わる前の「日本橋川の上空」を船から眺める

 今回は日本橋にある船着き場から船に乗り込み、地下化区間の現状を川から眺めました。現在は、旧江戸橋出入口の高架の一部に撤去作業の足場が掛かっている状況です。

 船から見た日本橋川は、道路から見るのとは違い、想像以上に歴史的な構造物が多く残されていることがわかります。日本橋や江戸橋だけでなく、西河岸橋や一石橋、常盤橋、新常盤橋など、年季を感じさせる橋が続くほか、常盤橋周辺の河岸には江戸城の石垣も残っています。

 常盤橋付近には、ツタの絡んだ、窓のないビルのような構造物が河岸に立っています。これは現在の八重洲線の換気所です。この区間では八重洲線を拡幅する形で都心環状線が地下で合流することから、換気能力を高めるため、この換気所は新たな建屋に建て替えられる予定です。

 現在の首都高は、1964(昭和39)年の東京五輪に間に合わせるため、当時の土木技術を結集して作り上げられたもの。首都高の担当者も「河川の線形にあわせ、曲線を組み合わせた高架橋は設計・施工が難しいものだった」と話します。ビルの隙間を縫うように走る高速道路は、当時の人々にとって、日本の近未来を象徴するような風景でもありました。

 地下化工事の完了後、高架橋の一部を土木遺産などの形で残すかどうかについては、現在特に計画などはないとのこと。水上を曲りくねる首都高の風景はまだ都内の各所で目にすることはできますが、日本橋の石積みのアーチ橋とが織りなす風景は、残り20年弱となります。