東京五輪の開催に伴い、期間中の首都高速を利用する自家用車などで1000円値上げが実施されます。コロナ禍以前に決まったことでしたが、社会は変容し、大会は無観客かつ緊急事態下での断行に。施策について国土交通相の見解を聞きました。

「コロナ以前と交通量は変わらない」

 東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、期間中の首都高速を利用する一部車両で、一律1000円値上げが敢行されます。対象は普通車・軽四輪車・自動二輪車の事業用を除く自家用車、いわゆる白ナンバーが中心です。4度目の緊急事態宣言で再び活動自粛が求められている中、値上げは必要なのでしょうか。

 赤羽一嘉国土交通相は7月16日(金)の会見で問われ、次のように語りました。

「今月12日から緊急事態宣言が発令されているが、首都高速の交通量は例年と同程度。現状でも渋滞が発生している。円滑な移動のためには交通量を削減することが必要。しっかりと協力をしてまいりたい」

 首都高の値上げは選手や大会関係者の定時移動を実現するためですが、国土交通大臣がこの料金を認可したのは2020年2月でした。東京都に発令されている緊急事態宣言や首都圏自治体が求める県境をまたぐ移動の自粛を考えると、コロナ禍とそれ以前では、根本的に交通量が違うようにも思えます。

 しかし、2019年7月16日と2021年7月13日、7月中旬の同じ火曜日で1日の首都高速利用台数を比較すると、107万台(2019年)と105万台(2021年)だといいます。「宣言下でも物流以外の自家用車が動いていると考えられる。期間中は、この状態で大会関係車両が乗り入れるので、ロードプライシング(道路料金施策)によって交通量を抑えることが必要」。国交省高速道路課はこう話します。

 赤羽国交相はさらに、ロードプラシング施策決定までの過程も重視しています。

「期間中の首都高速におけるロードプライシングの目的は、渋滞を回避して、大会関係車両の円滑な移動を確保すること。国交省や首都高速会社が独自で決定する性格のものではなく、東京都と大会組織委員会の協力要請に基づき、会社が実施する」

 4回目の緊急事態宣言が発令された後も、施策変更の依頼はないことから国交省独自の変更はできない、という立場です。

観客は自家用車では移動しない?

 そうはいっても、無観客開催なのだから交通量は減少するとの指摘もあります。赤羽国交相はこの指摘を認識しつつ、次のようにロードプライシング施策の前提条件を話しました。

「私どもの理解では、観客の移動は乗用車を想定していない。公共交通機関を利用するのが原則なので、これによる首都高速の交通量減少は見込んでいない」

 料金値上げはオリンピック期間前後の7月19日から8月9日、パラリンピック期間の8月24日から9月5日、毎日6時から22時のあいだです。利用区間を特定できるETC車は都内で、現金車は全域で実施されます。

 コロナ対策もオリパラ対策も、移動を抑制するという目的は同じです。無観客になっても、大会開催のために企業が休業したり、物流でも遅延・荷受けの停止が見込まれたりしていることを考えれば、せめて対象範囲を狭めるという配慮があってもよいのではないか、という気もしますが、そもそも「動員数と自動車交通量は無関係」という前提に立てば、ロードプライシング見直しの可能性はありません。
 
 しかし、この考えに立ったロードプライシングは矛盾も抱えています。

 というのも、首都高の1000円値上げをする一方、深夜時間帯で全車を対象に料金を半額にする、という逆の施策も実施されるからです。これについて国交省高速道路課は、「全体の交通量を抑えた上で、どうしても移動しなければならない車や物流の深夜シフトをするため」としています。
 首都高速のロードプラシング期間中、NEXCO系高速道路では休日割引の適用除外が続きます。利用の減少で感染拡大抑制を狙う料金施策ですが、高速道路利用を控えることが感染抑制につながるのであれば、宣言下の首都高速を深夜半額にして自家用車の移動を増やすことは矛盾します。

 高速道路は利用者の通行料で建設されています。利用者本位で効果的な料金施策を考えてほしいものです。