着用の義務どころか、メーカーオプションでも用意されていなかった幼児バスの後席用シートベルト。かねて危険性も指摘されていたなか、三菱ふそう関連会社がこれを新開発しました。背景には車両の進化ゆえの問題があります。

なぜ幼稚園バスにはシートベルトがない?

 三菱ふそうバス製造(富山市)の関連会社で、バス部品の製造などを手掛けるエムビーエムサービス(以下MBMS)が、マイクロバスの「幼児用保護ベルト」を開発、2021年7月からYouTubeで紹介動画を公開するなどして拡販しています。

 幼稚園バスなど「幼児バス」での使用を想定したものですが、一般的なバスに見られる2点式シートベルトではありません。シートの背面にリュックサックの肩掛けのようなものが取り付けられており、それを両肩にかけ、胸のストラップをかけて固定するというものです。

 ストラップのバックルにはマグネットが内蔵されており、幼児でも簡単にワンタッチで装着、脱着できるといいます。また、肩ベルトの位置は上下12cmまで調節可能で、体格に合わせられます。

 MBMSによると、このような保護ベルトは従来なかったもので、同社はこの機構の特許も出願しています。

 実はこうした「幼児バス」、運転席や先生の座る席にシートベルトはあっても、幼児の座席は、シートベルトの着用義務もなければ、メーカーオプションによるシートベルトの設定もありませんでした。

 というのも、幼児が自らベルトを脱着することが難しく、緊急時の脱出が困難であるほか、また体格が年齢によって異なるため、一定サイズのベルトの設定が難しいとされているためです。しかし実際に事故も起こっており、保育施設や販売店が独自にシートベルトを取り付ける動きもあります。

 しかし今回、MBMSは三菱ふそうからの依頼を受けて、幼児用保護ベルトを開発しました。国のガイドラインでも、幼児バスのシートベルト問題は「将来に向けての課題」とされてきましたが、ここへきて開発が進んだのはなぜでしょうか。

バスが安全になったからからこそベルト必要?

 今回の保護ベルトは、直接的な事故が要因となって開発が急がれたわけではないようです。MBMSによると、新車のマイクロバスに、衝突被害軽減ブレーキが装備されてきていることが背景にあるといいます。三菱ふそうのマイクロバス「ローザ」でも、2019年モデルから標準装備になりました。

 衝突被害軽減ブレーキ装備車は、周囲の障害物を検知し、場合によっては衝突回避を避けるために強めのブレーキが自動でかかります。安全性を高める先進技術ですが、もしシートベルトのない幼児バスで作動した場合、悲惨な事故につながりかねないことは想像に難くありません。

「よもやの事故が発生した場合に少しでも軽減できるように」(MBMS)との思いで開発したという今回の幼児用保護ベルト、三菱ふそう販売部とも試行錯誤して商品化につなげたといいます。

 ちなみに、保護ベルトの開発にあたってはランドセルを大いに参考にしたそうです。