列車内にディスプレイが設置され映像が流れている……現代では、案内表示とともに広告などが放映される光景は、特に都市圏の車両では一般的です。しかしテレビ放送が開始されて間もない頃に、「テレビがある車両」が走り始めています。

テレビ放送の黎明期にサービス開始

 特に都市圏を走る列車では今や、車内にディスプレイが設置され、ニュースや広告を見られるのは一般的になりつつあります。しかし、車体に「テレビカー」の文字を掲載し、映像が見られることを大々的に宣伝していた時期もありました。

 1954(昭和29)年9月3日、京阪電鉄が特急列車において「テレビカー」の運行を開始しました。NHKが放送開始した約1年後、まだ一般にテレビが普及していなかった時代に白黒テレビが先頭車両に設置された列車は、画期的だったといえるでしょう。

 放映されたのは基本的にNHKの地上波や衛星放送でしたが、民放のプロ野球中継が流れることもありました。その後、1971(昭和46)年に登場した初代3000系電車からはカラーテレビとなり、「テレビカー」は京阪の大きな特徴になっていきます。

 ちなみに、車内にテレビを設置し放映したのは京阪が初ではありません。東京都と千葉県に路線網を持つ京成電鉄が、同じく1954年に走らせたものが初です。

 ただ、京阪は2013(平成25)年3月まで「テレビカー」を運行。60年弱、それこそテレビ放送の黎明期から長らく健在だった設備として、他社と比較しても京阪「テレビカー」がテレビ付き車両の代名詞といっても過言ではないでしょう。廃止された理由には、インターネットの普及などで個人が手軽に情報を入手できるようになり、その使命を終えたことが挙げられます。

「テレビカー」は2021年現在、京阪からは姿を消していますが、別の場所で走っています。

 それは富山地方鉄道です。1991(平成3)年から一部の3000系が譲渡されました。車両はオレンジ色に赤色というおなじみの京阪特急色です。車両外観に「テレビカー」の文字も見られ、先頭にはシンボルである鳩のマークも掲げられています。テレビは液晶テレビに更新されていますが、NHKなどの番組を放映しており、往年の「テレビカー」を彷彿とさせます。