東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の関係車両が、3か月のあいだに多数の交通事故を起こしました。安全対策の欠如を指摘する声もあります。なぜ事故は多発したのでしょうか。

「適切な対応」でも事故が続いた

 東京オリンピック・パラリンピック大会関係車両の交通事故、この3か月で約80件。組織委員会が取材に対し、このように明かしました。

 組織委員会が把握する事故には、8月26日に発生した車椅子利用者の乗車中の落下事故など人身事故が含まれています。組織委員会は、警視庁から「再発防止策を講じるよう指導を受けた」と説明しますが、運行管理の専門家は「大事故に至らなかったのは、幸運としかいいようがない」と驚きます。

 大会関係車両は、パスを所持するすべての人を対象に乗員輸送を行います。輸送には2系統あり、1系統は選手やコーチを運ぶバスやタクシー、もう1系統は、主に運営スタッフを運ぶスポンサーから提供されたワンボックス車などです。開催期間中などの事故について、組織委員会は次のように話しました。

「輸送サービスの提供を開始した7月8日から直近9月6日までに、大会関係車両に関係する事故等が約80件発生しました。このうちの大半が物損事故ですが、一部に人身事故の発生がありました」

 個別の物損や人身事故の割合など詳細については明らかにしていません。3か月で約80件という数字も、あくまで組織委員会が話した事故件数で、警視庁は8月3日、オリンピック開会日から前日までの11日間で大会関係者の事故が80件起こったとして、事故防止の徹底を組織委員会に申し入れています。組織委員会は「いずれも軽症」であることを強調し、次のような対応を語りました。

「大会関係者の車両による事故等については、逐次、報告を受けており、関係機関と連携し、当事者の方への対応を含め、適切に対処しています」

 大会関係車両の運行管理責任者は、組織委員会が選任した安全運転管理者です。安全運転管理者に講習を実施する首都圏の専門家に、この事故事例を評価してもらいました。

「運転管理の視点から感想を言うと、極めて危険な状況だったと思います。3か月で80件ということは、ほぼ毎日どこかで事故が起きていることになります。安全運転管理で問題なことは、1件の事故の軽重ではなく、事故が起き続けることです。特にこの場合は人を運んでいるので、台数に関係なく事故を限りなくゼロにする努力が必要だったのはないでしょうか」

運転するのもボランティア

 大会関係車両のハンドルを握るのは、主にボランティアです。車両の移動は無償の輸送で運賃を請求しないので、二種免許を持つプロドライバーもいるものの、必須条件ではありません。組織委員会に安全運転指導について尋ねました。

「プロ、ボランティアを問わず、大会前の研修から安全・安心が第一との意識を共有し運行を担っていただきました。安全・安心な大会運営にあたり、交通法規の遵守を前提とした安全な運行の実現を関係者に周知し、事故の再発防止に努めました」

 ただ、前述の専門家は懸念を示します。

「技量や意識の差が大きく、運転者の交替も激しいため安全運転の意識を徹底できなかったのではないか。交通事故は企業イメージを大きく損ねるだけでなく、一般企業では保険料というコストにも跳ね返る。そういう歯止めも、乏しかったのではないか。一般企業もそうですが、最終的にはトップが交通安全の意識を持たないと難しい」

 なぜ交通事故は多発したのでしょうか。組織委員会の回答はこうです。

「大会関係者の車両による事故等については、逐次、報告を受けており、関係機関と連携し、当事者の方への対応を含め、適切に対処しています。また、大会運営車両については、全て自動車任意保険に加入しており、保険会社とも相談しながら適切な対応を行っております」