かつてよく見かけた遊園地の遊具「パンダカー」。子どもを背に乗せてゆっくり動く姿はどこかホッとさせてくれたものの、最近では目にする機会も減りました。そんなパンダカーの「聖地」が、パンダ命名に沸く上野の隣、浅草にあったのです。

こっちのパンダは絶滅危惧種? 「パンダカー」

 2021年10月8日に上野動物園の双子パンダが「暁暁(シャオシャオ)」「蕾蕾(レイレイ)」と命名されるなど、今、パンダ界隈が盛り上がっています。命名に沸く上野はパンダ推しですが、実は上野のお隣、浅草には”乗るパンダ”の「聖地」があります。

 乗るパンダとは「パンダカー」のこと。デパートの屋上遊園地などでよく見かけた、子どもたちを背中にのせてゆっくりと動くパンダ型の乗りものです。デパートの屋上遊園地も次々と閉園され、最近では見かけることも少なくなった気がします。そんなパンダカーの知る人ぞ知る聖地、「浅草花やしき」(以下、花やしき)に行ってみました。

 日本初の遊園地といわれ、浅草寺のすぐ隣に位置する花やしきが開園したのは、今から168年前の1853(嘉永6)年。歴史の教科書に載っていた「黒船来航」と同じ年というから驚きです。もっとも当初は牡丹や菊などの花を愛でる場で、明治に入ってから遊戯施設が置かれるようになったのだそうです。

 そんな花やしきでは、入園する前から早くもパンダカーが出迎えてくれます。入口脇に設置されたポストの上に小ぶりのパンダカーが乗っているのです。小さいながらもちゃんと、ハンドルや足置きがデザインされています。そうそう、パンダカーってこんな感じでした。

 入口ゲートをくぐると、すぐ目の前にゴージャスなメリーゴーランドが迫ります。ここ花やしきは狭い敷地内にたくさんのアトラクションが詰め込まれているのが特徴。現存する日本最古の「ローラーコースター」や、空飛ぶ海賊船で園内を巡る「スカイシップ」、西洋風お化け屋敷の「スリラーカー」などなど、レトロなアトラクションが健在ということで根強いファンがいるそうです。

 アトラクションにも心ひかれますが、今日の目的は「パンダカー」。どこで会えるのかと見回すと、あちこちからパンダカーマークが目に飛び込んできます。案内所の暖簾にパンダカー、ゴミ箱にもパンダカー、縁日コーナーの輪投げ看板にもさりげなくパンダカーと、パンダカーを園のマスコットにしています。

歴史的にも「聖地」でした。パンダカーの

 園内を進んでいくと、パンダカー1体目に遭遇。ただこの子はいわゆるパンダカーとは様子が違い、花やしきと書かれた台座の上に鎮座して、細かなライトがキラキラと降りそそがれた“光るパンダカー”になっています。乗って遊ぶことはできないモニュメントのようですが、なかなかの聖地感を醸し出しています。

 そしてその先に……いました、乗って遊べるパンダカー! 記憶の中にいたままの姿です。屋外ステージの脇にぽつんと佇んでいる姿が少しさびしげではありますが、きっと訪ねたのが平日の午前中だからでしょう。週末にたくさんの子どもたちを背中に乗せてお散歩するために、身体を休めているところなのかもしれません。思えば、パンダカーをこんなじっくりと見たことはありませんでしたが、前から見ると表情があるようなないような顔が、しみじみかわいく思えます。

 後ろ姿のお尻もどっしりして、またかわいい! 触れるとぬいぐるみの柔らかな毛の下に硬い骨格が感じられます。大人も乗れるということでまたがってみると、意外なほどの大きさにびっくりしますが、子どもたちには頼もしいかぎりでしょう。

 パンダカーは200円を投入すると、電子メロディを響かせながら約2分間動いてくれます。通常は前に進み、手元の赤いボタンを押せばバックもできて、運転している感じが楽しめます。

 なぜ花やしきはここまで“パンダカーの聖地”なのでしょうか。案内所の方にうかがうと、日本で初めてパンダカーが置かれた場所だからだそうです。花やしきはかつて株式会社トーゴ(東洋娯楽機)という、ローラーコースターなどの業務用遊具を製造する会社が運営しており(現在は株式会社花やしき)、そのトーゴが作ったパンダカーを、日本で最初に花やしきに置いたのだそうです。

 ちなみに、こうした乗って遊ぶ動物型の遊具は「メロディペット」と総称され、そのなかのパンダ型のものを特に「パンダカー」と呼ぶとのこと。園内には、お子様専用のミニパンダカーもあるのですが、この日はお休みということで会えず。残念でした。

ラーメンにまでいる「パンダカー」

 園内のお土産屋さんをのぞくと、ここにもパンダカーグッズがあふれています。パンダカーをぬいぐるみにしたキーホルダーやストラップに、ポーチやトートバッグ、クリアファイルやボールペンなどなど。本物のパンダカーに会った後ではどれも愛おしく、家に連れ帰りたくなってしまいます。時節柄、パンダカーにのった「アマビエ」のステッカーまでありました。

 フードコート「BAKEZONA」では「パンダカーラーメン」が一番人気ということで、もちろんいただきます。どこがパンダカーラーメンかというと、トッピングの海苔にパンダカーが描かれているからなのですが、ちょっと残念なのは正面からの顔だけだったこと。これではただのパンダなのでは……かつてはパンダカーとはっきりわかる横から見たバージョンがあったようなので、その復活を切に願います。ちなみに、味は奇をてらわない素朴な感じで文句なし! でした。

 見て、乗って、買って、食べてと、大満足のパンダカーの聖地。パンダ人気が高まる今、懐かしの“乗るパンダ”を体験するのもいいかもしれません。なお花やしきでは10月までハロウィンイベントを開催しており、パンダカーに乗りながらマジックハンドでお菓子をつかむ「パンダカー 秋の大収穫祭」も行われています。