東京駅八重洲口で建設が進む日本最大規模のバスターミナルが、一期開業まで1年を切りました。同じような施設の建設が全国的に行われていますが、それらにはメリットと同時に、「案内のわかりやすさ」という課題もあります。

3期3地区に分かれる日本最大級のバスターミナル

 東京駅前に建設中の高速バスターミナル「(仮称)八重洲バスターミナル」(以下、八重洲BT)が、開業まで1年を切りました。最終的には、高速バス中心のターミナルとしては国内最大級の規模となる予定で、その全貌が見え始めました。

 八重洲BTは、東京駅八重洲口の向かい、外堀通りを挟んだ東側で進行中の都市再開発事業の一環として、3つの高層ビルの地下部分に設置されます。そのため、八重洲BTも3地区に分かれています。東京駅を背に左手(地理的には北)から順に「東地区/北地区/中地区」と呼ばれますが、本記事では2022年秋開業が見込まれる北地区(真ん中のビル)を第一期、2025年度見込みの東地区(北側のビル)を第二期、2028年度見込みの中地区(南側のビル)を第三期と呼ぶことにします。

 全面開業すると総面積約2万1000平方メートルの敷地に、20の乗降バース(のりば、おりば)が配置される構造で、今ある「バスタ新宿」の15バース(乗降合計)を上回る規模になります。UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が保有し、賃貸借方式により京王電鉄バスが運営を担当します。

 ここには主に、周辺の路上停留所や、近くの「鍛冶橋駐車場」を発着する高速バスが乗り入れることになっています。3期に分かれて開業するため、有識者や行政らによる会議が定めた優先順位に基づいて、順次、移行する予定です。一方、東京駅構内のJRバス東京駅高速バスターミナルについては、大きな変更はない見込みです。

 一般に、大規模バスターミナルは構想から開業まで15年ほどかかるので、残り1年となった第一期開業への準備は最終盤だと言えるでしょう。一方、開業まで7年を残す第三期へは中盤に当たり、3つの異なるプロジェクトが同時進行しているような状況です。第一期開業に向け、現地では建設工事の最中です。そして運営を担当する京王電鉄バスでは、現場のオペレーションなど運用面の準備が追い込み段階を迎えています。

 しかしそこには、越えないといけない壁があります。発着便の構成は「バスタ新宿」などと比べても複雑で、それをいかにわかりやすく案内するか、という課題があるからです。

千葉への通勤高速バスを待っていたら「青森行き」がやってくる

 乗り入れ予定の路線は、大きく2つのグループに分かれます。まずは、京成バスなどが運行する、千葉県方面への短距離路線です。主に通勤客が日常的に利用しており、特に東京湾アクアライン経由の木更津方面へは、夕方ラッシュ時には5分間隔で頻発します。もう一つが、主に夜行の長距離路線です。名古屋、京阪神方面のほか、北は青森、西は福岡までの路線があります。

 短距離路線は先着順の自由席制なので、乗客には、列に並んで待ってもらう必要があります。一方の長距離路線は座席指定制で、ほぼ全ての乗客がウェブ上などで予約、決済を済ませており、並ぶ必要はありません。むしろ早めに来館する人が多いため、座って待つスペースが必要です。八重洲BTでは、性格の異なる2つのグループの路線を、同一のバースから発車させることになります。

「バスタ新宿」など多くの大規模ターミナルでは、路線(行き先)によってバースが分かれています。たとえば名鉄バスセンター(名古屋市)では、「5〜8番のりば」が新宿行きなど座席指定の中・長距離路線、それ以外は愛知県周辺への短距離自由席路線です。

 しかし、八重洲BTでは、全てのバースから両方のタイプが発車する予定です。超一等地に立地する以上、効率よくバースを使う必要があるからです。

 つまり、仕事帰りのバスを並んで待つ通勤客の前に、青森行きや高松行きが入線してくるというシーンが繰り返されます。また、当BT始発の便もあれば、東京ディズニーリゾートなどを発車した後に八重洲を経由する便もあり、バスの入線順序が乱れる恐れもあります。安全、かつわかりやすく誘導、案内するため、大掛かりな車両管制システムと、デジタルサイネージや多言語自動放送などを組み合わせた旅客案内システムの設計が佳境に入っています。

 最終的には3地区に分かれるため、「自分が乗る便は、どのビルの地下から発車するのか」を、便ごとにわかりやすく案内することも重要です。1か所集中の巨大施設と比べ、3地区に分けることで、各地区のエントランスや発券窓口からバスへの移動は最小限の距離で済みますし、周辺道路の交通量も分散される点が強みです。

集約ターミナルは「間違えると大変」 全国で建設進む「バスタ」への注文

 その反面、乗客が地区を間違うと大変です。名称の付け方など案内方法について、乗客に不安を与えない工夫が求められます。この点は、長年、狭隘な施設ながら多数の便が発着する旧・新宿高速バスターミナルを運営し、「バスタ新宿」に移転集約後もその運営の一翼を担う京王にとって、腕の見せ所と言えるでしょう。

 全国に目を転じると、八重洲BTを追うように数多くのバスターミナル新設計画が進んでいます。たとえば国による「バスタプロジェクト」は、災害対応機能なども併せ持つ交通結節点を全国に展開するもので、札幌、新潟、大宮、神戸などの都市にバスターミナルが設置される予定です。また、自治体や民間による計画も、東京や大阪のターミナル駅で進んでいます。

 筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)も、これらのプロジェクトの一部にコンサルタントとして参加していますが、その多くは、運営者が未定のまま、先に施設の設計を進めざるを得ない状況です。

 たとえば、一口に「飲食店」と言っても、料理の種類によって厨房やテーブルの配置は変わるはずで、それはバスターミナルも同じです。人手をかけて手厚い案内誘導を行うことで1便でも多く受け入れるのか、それともローコストの運営を目指すのか、立地条件や乗り入れ路線を考慮しオペレーションをイメージしながら施設を設計することが肝要でしょう。

 高速バスの停留所は新設が困難なため、とりわけ大都市の主要駅周辺で停留所不足に泣かされてきたバス業界にとって、バスターミナル建設ラッシュは歓迎すべきことです。しかし、路上停留所から新設ターミナルに移行することで、発着便の数に制約がかかり臨時増便を柔軟に設定しづらくなったり、増加したコストが運賃に転嫁されたりすれば本末転倒です。

 バスターミナルの主役は、利用する乗客であり、乗り入れるバス事業者、とりわけ乗務員です。市場のニーズを細かく調査し業界の声をよく聞きながら、単なる「ハコ」作りではなく、魂の入ったターミナルを作り上げてくれることを期待しています。