北総線の新鎌ヶ谷〜千葉ニュータウン中央間に並行して「生活バスちばにう」が運行されています。北総線の運賃が高いことから沿線住民の負担を軽減するために鎌ケ谷観光バスが運行しているものです。この「生活バスちばにう」に実際に乗車してみました。

沿線住民の負担を軽減するために

 北総線こと北総鉄道のうち、新鎌ヶ谷〜千葉ニュータウン中央間では並行してバス路線が運行されていることをご存知でしょうか?

 北総線は運賃が高額な路線として知られていますが、沿線住民の負担を軽減するべく2014(平成26)年から「生活バスちばにう」が運行されているのです。この「生活バスちばにう」とはどんなバスなのでしょうか? 実際に乗ってみることにしました。

北総線の運賃はどれくらい高いのか?

 北総線を利用すると高額な運賃を実感するのですが、北総線を利用しない人にとってはピンと来ないのかもしれません。そこで、まずは運賃を比較してみました。

北総線は京成高砂駅を起点としていますが、「生活バスちばにう」が運行されている新鎌ヶ谷駅からの運賃で比べてみます。

 北総線の初乗り運賃は切符の値段で210円(ICカードでは203円)ですが、隣の西白井駅までの距離が長く、310円となっています。新鎌ヶ谷〜西白井間の営業キロは3.1kmで、ほぼ同距離のJR東日本東京〜上野間(営業キロ3.6km)が運賃160円と設定されていることを考えると、JR線の倍程度の運賃が設定されていることが分かります。

 新鎌ヶ谷〜千葉ニュータウン中央間は営業キロ11.1km・運賃580円ですが、中央線の東京〜新宿間は営業キロ10.3kmで運賃200円、総武快速線の東京〜新小岩間は営業キロ10.0kmで運賃170円であり、運賃が3倍近くも違うのです。ちなみに、JR東日本の首都圏で設定されている電車特定区間の運賃で北総線に当てはめてみると、新鎌ヶ谷〜西白井間が160円、新鎌ヶ谷〜千葉ニュータウン中央間が220円になります。

 一方、北総鉄道と並行して走る「生活バスちばにう」では、新鎌ヶ谷駅〜西白井駅北口間が150円、新鎌ヶ谷駅〜千葉ニュータウン中央駅北口間が330円に設定され、北総線と比べて半額程度の運賃で利用できるようになっています。11枚綴りの回数券(10円券、50円券、100円券、300円券)も発売していますが、交通系ICカードには対応していません。

「生活バスちばにう」とは?

「生活バスちばにう」は沿線住民らの意向を受けて運行されているバスで、実際の運行は鎌ケ谷観光バスが担当しています。

 2014年6月から新鎌ヶ谷駅〜千葉ニュータウン中央駅北口間で直行便の運行を開始ししたほか、2017年7月からは各駅停車便に相当する「北環状線ルート」と、千葉ニュータウン中央駅北口〜印西牧の原駅付近を周回する「牧の原ルート」の2路線が加わりました。さらに2019年9月には「北環状線ルート」が西白井駅北口にも停車するようになっています。

 昨今の新型コロナウイルス感染症では、公共交通機関の利用者が大きく減りました。「生活バスちばにう」も影響を受けて運行の維持が厳しくなり、2020年にはクラウドファンディングによって資金調達を行ったことがありました。

「生活バスちばにう」の3路線

 先の通り、「生活バスちばにう」には新鎌ヶ谷駅〜千葉ニュータウン中央駅北口間の直行便と「北環状線ルート」、千葉ニュータウン中央駅北口発着の「牧の原ルート」の3路線が設定されています。

 新型コロナウイルス感染症に伴う旅客数の減少によって運行ダイヤの見直しが行われ、2021年現在では直行便は平日の朝と夕方だけに設定され、「牧の原ルート」は平日5本のみの運行、平日・土休日ともに運行されているのは「北環状線ルート」だけです。

 直行便は新鎌ヶ谷駅〜千葉ニュータウン中央駅北口間をノンストップで運行、所要時間は25分ないし30分です。北総線は新鎌ヶ谷駅から東側で国道464号と並行して走っていますが、「生活バスちばにう」の直行便も大部分は国道464号を走っています。新鎌ヶ谷・千葉ニュータウン中央の駅を出入りする場所で国道464号から外れる程度です。

「北環状線ルート」は西白井と白井の両駅北口に立ち寄り、駅のロータリーに設けられたバス停に停車します。白井駅北口〜千葉ニュータウン中央駅北口間では、主に千葉県道189号千葉ニュータウン北環状線を走行し、途中12箇所のバス停(新鎌ヶ谷駅南口〜千葉ニュータウン中央駅北口間では合計16箇所)が設定されています。こちらの所要時間は平日で35分、土休日では千葉ニュータウン中央駅北口行きが42分、新鎌ヶ谷駅南口行きが46分と設定されています。直行便・「北環状線ルート」とも所要時間に違いがあるのは、渋滞などの交通事情を反映したものと考えて良いでしょう。

「牧の原ルート」では、千葉ニュータウン中央駅方で千葉県道189号を走るほか、印西牧の原駅付近では時計回りのルートで走行、千葉ニュータウン中央駅北口・印西牧の原駅を含めて19のバス停が設定されています。全体の所要時間は35分ですが、千葉ニュータウン中央駅北口から印西牧の原駅に行き、再び千葉ニュータウン中央駅北口に戻るというルートですので、千葉ニュータウン中央駅北口→印西牧の原駅は13分、印西牧の原駅→千葉ニュータウン中央駅北口は22分と設定されています。

 ちなみに、北総線新鎌ヶ谷〜千葉ニュータウン中央間の所要時間は、アクセス特急がノンストップで8分程度、普通列車が12分程度で運転されています。千葉ニュータウン中央〜印西牧の原は1駅で所要時間は4分程度ですので、北総線が圧倒的な速さを誇ります。

「生活バスちばにう」3路線に乗る

「生活バスちばにう」のうち、最も便数が多いのは「北環状線ルート」です。「北環状線ルート」と直行便は新鎌ヶ谷駅から発着していますが、バス停は新鎌ヶ谷駅の南側にあるイオン鎌ヶ谷店の方にあります。

 今回の乗車では、新京成線で新鎌ヶ谷駅から「生活バスちばにう」に乗り継ぎましたが、新京成の新鎌ヶ谷駅の改札口から「生活バスちばにう」のバス停は遠く、改札口からバス停まで300mほど歩くことになります。この間で案内らしきものは見当りません。

「生活バスちばにう」のバス停に向かうには、新京成線の改札口から一旦北側に出て、東側に向かって歩いて東武線の改札口に向かいます。東武線の改札口を通り過ぎ、今度は南に進路を変えて北総線や新京成線の高架線をくぐります。すると、イオン鎌ヶ谷店が見えてきますが、その右手にバスロータリーがあり、そこに「生活バスちばにう」のバス停が設けられているのです。

 新鎌ヶ谷駅周辺を大きく迂回する形ですが、新鎌ヶ谷駅構内に南北自由通路が整備される計画があり、南北自由通路が完成すれば「生活バスちばにう」のバス停へのアプローチは楽になるのかもしれません。

「北環状線ルート」に乗車

 まず乗車したのは「北環状線ルート」です。「生活バスちばにう」で使用されるバスは小型のバスと中型のバスがあり、乗車した便では小型のバスが使用されていました。

 日中の便だったためか、乗客は比較的高齢の利用者が多く、座席がほぼ埋まる形で新鎌ヶ谷駅を発車、西白井駅北口・白井駅北口と停車していくにつれて乗客が降りていくという流れです。「北環状線ルート」では途中、白井聖仁会病院の近くにもバス停があり、通院で利用する人の乗車もありました。

 千葉ニュータウンといっても宅地が集積しているのは駅周辺だけで、それ以外は田園地帯と言って良いでしょう。先の通院客以外、途中区間の利用者は見当たりませんでした。

性格が異なる「牧の原ルート」

「牧の原ルート」では、北総線と並行する国道464号を走るのはごくわずかで、大半は北総線から離れたところを走っています。「北環状線ルート」や直行便と運賃は別体系で、これらの系統と乗り継ぎが可能な便もありますが、北総線と対抗するバスというよりは、地域の足としての性格を帯びています。

 実際に乗車してみましたが、千葉ニュータウン中央駅北口からの乗車は少なく、千葉ニュータウン中央駅の北側にあるオフィス街から利用者が大勢乗ってきました。このオフィス街から乗車した利用者が印西牧の原駅周辺のバス停で降りていくほか、千葉ニュータウン中央駅北口に戻る途中で、利用者を拾っていくという流れでした。

 なお、運賃は千葉ニュータウン中央駅北口→印西牧の原駅が220円、印西牧の原駅→千葉ニュータウン中央駅北口が270円で、途中のルートの違いから運賃が異なっています。所要時間こそ北総線には敵いませんが、北総線の運賃310円よりは割安に利用することができます。

北総線の列車に追い越される直行便

 最後は直行便に乗車してみました。夕方の新鎌ヶ谷駅行きに乗車しましたが、乗客は筆者を含めて2人だけでした。北総線と並行して国道464号を走るのですが、北総線に比べて国道464号はアップダウンが多く、並行する北総線を上や下に見る形となります。片側2車線の道路は夕方のラッシュにかかって交通量が多く、交差する道路との信号待ちもあって、当然ながら後から北総線の列車に追い越されてしまいます。

 新鎌ヶ谷駅付近では、「船取線」「船取県道」とも呼ばれる千葉県道8号を少しだけ走ります。この道路は東武野田線と並行する区間も多いのですが、ラッシュにかかって渋滞が発生していました。この結果、直行便のバスも新鎌ヶ谷駅に予定より少し遅れて到着しました。

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 北総鉄道では、近い将来に値下げを行うことが検討されています。北総線と同じく、ニュータウンの路線として建設された京王相模原線では、過去に設定されていた加算運賃を廃止・減額して値下げを行ったことがありました。このときの値下げ幅は1割程度でしたが、北総線でも大きく値下げとなることはないと予想されます。

「生活バスちばにう」の脅威は、北総線の運賃値下げよりも感染症によって人の動きが少なくなってしまった方にあるのですが、今後の動向が気になるところです。