車内での殺傷事件を想定し、JR東海が新幹線車両を使ったリアルな訓練を実施。緊迫した瞬間、乗務員と指令所、警察はどう対応し、どう事態は動いていくのか、知っておくと万が一の際、多少なりとも落ち着いて行動できるかもしれません。

乗務員と指令所・警察のやりとりも公開

 JR東海が2021年11月17日(水)、三島車両所で「東海道新幹線 総合事故対応訓練」を実施。そのひとつとして、「不審者による無差別殺傷」を想定した訓練も行いました。

 実物のN700S車両を使い、JR東海社員のほか6名の警察官も参加した臨場感、緊迫感のある訓練で、通常は乗客には聞こえない乗務員、指令員、警察のやりとりも、取材陣へ聞こえるようにセッテイング。そのとき列車がどういう状況になり、どのように事態が動いていくのか、リアルな形で取材することができました。

 この内容を知っていれば、万が一が自分に起きた際、多少なりとも落ち着ける要因になるかと思いますので、以下、そのときの車内状況、乗務員らがどう動いたかなどについて、時系列で記します。

 なお分かりやすくするため、一部で省略などをしており、一言一句そのままというわけではありません。

 今回の事件設定は、三河安城〜豊橋間を走行中の東京行き「のぞみ6号」15号車に、刃物を振り回した不審者が現れた、というものです。

 その始まりは突然、静かな車内に響きました。

不審者「なんやコラ!」

被害者「やめろ!」

閉じ込められた不審者

不審者「ふざけんなコラ!!」

被害者「落ち着け! 痛い!」

 車内が騒然となり、不審者が被害者に絡んでいるなか、ほかの乗客たち悲鳴をあげ、一斉に隣接車両へ避難してきます。

グループ通話(車掌)「15号車にて刃物を持った男性が暴れているという通報がありました。現地急行します」

 東海道新幹線の乗務員や警備員は、グループ通話ができる端末を持っています。指令所とも通話が可能。このグループ通話の内容は、乗客には聞こえません。警察官が列車に警乗する際も、このグループ通話ができる端末を持って実施するそうです。

車掌「お客様、残っていらっしゃいますか?」

警備員「刃物を捨てろ!」

不審者「何見とるんじゃコラ!」

 車掌が客席の座面を盾にしながら、15号車客室に到着。このとき乗客は被害者を除いて避難済みだったことから、残っている人がいないかを確認していました。

 ほぼ同時に、さすまたを持った警備員も到着。そして不審者を牽制して被害者を救出したのち、客室外へ待避して、デッキから扉が開かないよう押さえつけ、不審者1人だけを15号車客室内へ閉じ込めます。ちなみに東海道新幹線では、全区間、全列車で警備員が乗っているそうです。

不審者「おい! 出てこいや! ふざけんな!」

落ち着いてチャイナに座っている不審者

乗務員による車内放送「ただいま車内トラブルが発生したため、この電車は次の豊橋駅にて臨時停車を行います」

 車内が騒然としているなか、状況は通報後、ただちに乗務員間と指令所で共有され、並行して対応が進んでいました。

グループ通話(指令所)「6A(のぞみ6号)運転士さんどうぞ。警察にも通報済みです。豊橋駅15号車から突入します。豊橋駅に着きましたら、運転士さんがドアを開けてください」

 車掌とパーサー、警備員が乗客や不審者の対応をするなか、運転士と車外の指令所が必要な手配を行っていきます。東海道新幹線では、指令所からも客室防犯カメラの映像を見て、状況を確認しながら対応することが可能です。

グループ通話(運転士)「次の豊橋駅、上り1番線臨時停車を行います。警察通報済み、15号車から突入するそうです。豊橋駅到着しましたら運転士がドア扱いを行い、一斉開扉を行います」

グループ通話(車掌長)「了解しました。現状ですが、15号車まんなか付近のチャイナ(C席)に不審者は座っています。落ち着いています」

グループ通話(運転士)「刃物を持った男性、隔離完了でよろしいでしょうか?」

グループ通話(車掌長)「隔離完了しています」

グループ通話(指令所)「了解しました。こちらから車内放送を行います」

指令所による車内放送「新幹線総合指令所から、お客様にご案内いたします。この電車は、次の駅で臨時停車します。乗務員、または指令所からの指示にしたがい、落ち着いて行動されるよう、お願いします」(英語などでも放送)

 東海道新幹線では、指令所からも車内放送ができるそうです。

「武器を捨ててお話ししましょう!」

グループ通話(車掌長)「負傷者の状況はいかがでしょうか?」

グループ通話(パーサー)「負傷者は20代男性、右上腕、かなり深く切りつけられています。救急車を要請したほうがよいかもしれません」

グループ通話(指令所)「豊橋駅、救急車手配しています」

グループ通話(愛知鉄道警察隊)「愛知鉄道警察隊から車掌長。警察官6名、豊橋駅で待機しています。15号車、前方後方から3人ずつ乗車します」

グループ通話(運転士)「まもなく豊橋駅に到着します。到着後は、運転士の操作によりドアの一斉開扉を行います。左側のドアが開きます」

 そして「のぞみ6号」は豊橋駅に到着。運転士の操作でドアが開き、客室の前後から警察官が突入してきました。

警察官「武器を捨てなさい!」

不審者「なんだこらぁ!」

警察官「武器を捨ててお話ししましょう!」

不審者「何を話すんじゃボケぇ!」

 不審者が、警察官を小突いた瞬間でした。一気に動きます。

警察官「12時10分、公務執行妨害で現行犯逮捕!」

グループ通話(車掌長)「警察が確保しました」

 JR東海によると、東海道新幹線の車内には盾、さすまた、耐刃手袋、耐刃ベストが備えられており、乗務員は防犯スプレーを持っているとのこと。また、こうした万が一が発生した場合は、落ち着いて身の安全を確保し、乗務員へ通報してもらえれば、といいます。

 東海道新幹線に限らず、列車に乗る際は、そのどこに非常通報装置や非常通話装置があるか、普段から少し意識しておくと良いかもしれません。