トルコで空母化が検討されている強襲揚陸艦が登場。ただ肝心の艦載機が手に入らないでいることから、同国は艦載機を「無人機」とすべく動いています。その艦載機は、ウクライナ軍の使用で一躍有名になった「バイラクタル」です。

トルコの強襲揚陸艦にF-35を搭載…するはずだったが

 ロシア軍がウクライナへ侵攻して数日後の2022年2月27日、トルコ海軍が建造を進めている強襲揚陸艦「アナドル」が、初の洋上公試のため同国のセデフ造船所を出発しました。

「アナドル」はスペインの造船企業ナバンティアが同国海軍向けに建造した「ファン・カルロス1世」の設計を基に、トルコで建造された強襲揚陸艦です。原型の「ファン・カルロス1世」は、スペイン海軍が運用しているAV-8SハリアーII戦闘機の運用を想定して、艦首にスキージャンプ(艦載機の発艦装置)を設けています。

 2022年5月の時点で、スペイン海軍は導入を決めていませんが、「ファン・カルロス1世」は、アメリカ海兵隊とイギリス海軍でハリアーIIを後継したF-35Bの導入も視野に入れて設計されており、同艦と準同型艦の「アナドル」、オーストラリア海軍のキャンベラ級強襲揚陸艦は、飛行甲板の耐熱性強化など所要の改修を加えれば、F-35Bの運用が可能であると言われています。トルコ海軍は「アナドル」を単なる強襲揚陸艦ではなく、F-35Bを導入して軽空母としても運用する方針を示していました。

しかしトルコがロシアからS-400防空システムを導入したことで、S-400のレーダーにF-35がどのように映るのかがロシアに筒抜けになることを懸念したアメリカ政府は、トルコをF-35計画から排除し、購入契約を締結したF-35Aの引き渡しも行っていません。

 現時点でトルコのF-35計画への復帰の目途は立っておらず、F-35Bの導入も不可能な状態にあります。つまりトルコ海軍が構想していた「アナドル」を軽空母として使用することもできないわけですが、実はあるトルコ企業が「アナドル」の軽空母化を実現するための動いています。

空母は空母でも積むのは「無人機」!

「アナドル」の軽空母化実現のための動きを進めている企業の名は「バイカル・エアロスペース」。ロシアとウクライナの戦いで一躍世界にその名を知られるようになったUAS(無人航空機システム)「バイラクタルTB2」のメーカーです。

 バイカル・エアロスペースでCTO(最高技術責任者)を務めるセルチュク・バイラクタル氏は2020年10月30日に、バイラクタルTB2の艦載機型「バイラクタルTB3」の開発が順調に進んでおり、搭載する国産エンジンが完成していることを明らかにしています。

 バイラクタルTB3は主翼の折り畳み機構を備えており、トルコ国防省はアナドルに30機から50機程度搭載できると述べています。実現すれば、バイラクタルTB3は世界初の戦闘能力を持つ艦載固定翼UASとなり、「アナドル」がそれを世界で初めて運用する「空母」となる可能性があります。

 また、バイカル・エアロスペースはジェットエンジンを動力とする戦闘用UAS「キジエルマ」の開発も進めており、セルチュク・バイラクタル氏は2022年3月12日に自身のTwitterアカウントで、工場内に運び込まれたキジエルマの胴体の写真を公開しています。

 キジエルマは高いSTOL(短距離離着陸性能)を持つUASとして開発されており、トルコの新聞「デイリー・サバ」は「アナドル」での運用が可能であると報じています。バイカル・エアロスペースでゼネラル・マネージャーを務めるハルク・バイラクタル氏は、「アナドル」で運用できる戦闘用UASを1年以内に開発すると述べており、これはキジエルマの艦載機型を意味するものと思われます。

空自も検討あり得る? バイラクタル氏語る

 カタパルトを持たない空母や強襲揚陸艦での固定翼UASの運用は各国で検討されており、ブラジル海軍は将来的に固定翼UASを導入することを視野に入れて、ヘリコプター空母「アトランティコ」の艦種を、多用途空母へと変更しています。

 実のところ日本にも艦艇で固定翼UASを運用すべきという意見があり、防衛装備庁は2019年8月30日に発表した「研究開発ビジョン」で、固定翼UASの発着艦も可能と見られる全通甲板を持つ「無人機母艦」の構想を示しています。

 前述したハルク・バイラクタル氏は3月8日のNIKKEI ASIAに掲載されたインタビュー記事の中で、「日本も早く戦闘用UASを導入すべきで、バイラクタルTB3はいずも型ヘリコプター搭載護衛艦にフィットする」と述べています。

 海上自衛隊が艦艇での戦闘用UASの運用にどの程度の関心を持っているのかは不明ですが、前述した無人機母艦やいずも型ヘリコプター搭載護衛艦、おそらくより大型で航空機の運用能力が強化されるであろう、おおすみ型輸送艦の後継艦を有効活用する上で、戦闘用UASの導入を真剣に検討していく必要があると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。