東西冷戦真っ只中の1981年6月、アメリカで角ばった異形の機体が初飛行しました。世界初の実用ステルス機として産声を上げたF-117は、常に秘密のヴェールに包まれ続け、退役後も、こっそり飛んでいるようです。

初飛行から7年間、存在が秘匿されたニンジャ戦闘機

 1981(昭和56)年6月18日、アメリカのロッキード社(現ロッキード・マーティン)が開発したF-117「ナイトホーク」戦闘機が初飛行しました。本機は世界初の実用ステルス機と呼ばれる機体で、レーダーで捉えにくくするため、曲面をなるべく使わない平面形状を多用した独特の外観を有しているのが特徴です。

 航空機としては空力特性上、不利な形状をしていますが、操縦にはパイロットの操作を電気信号で翼やエンジンなどに伝えるフライ・バイ・ワイヤを用い、コンピュータで常時補正することで、飛行時の安定性を確保しました。

 また、赤外線探知でも捉えにくくなるようエンジン排熱も最低限に抑える工夫が盛り込まれています。そのひとつが当時の戦闘機では当たり前の装備となっていたアフターバーナーの非搭載で、さらに排気口も機体上面に設けるなどして対策を施しています。

 ほかにも自機が発したレーダー電波が敵によって捕らえられ、逆に探知されないよう、あえて機上レーダーは搭載していません。そのため、目標の探知や捕捉用として、レーダー目標指示装置や前方監視型赤外線装置(FLIR)などが備えられていました。

 外観が真っ黒なのも、夜間飛行時に目視で発見されないようにするためだったといわれています。

退役したはずなのに、なぜか目撃例多数のワケ

 当時、最先端の技術の塊であったF-117は、存在自体が極秘扱いとされたため、1982(昭和57)年には部隊配備が始まったものの、アメリカ国防総省が写真を公開したのは初飛行から7年半後の1988(昭和63)年11月でした。しかも、その後も撮影には制限がかけられたほか、詳細も公にされることはなく、極めて厳重に秘匿され続けました。

 ただ、その後、より優れたステルス性を持つB-2爆撃機やF-22「ラプター」戦闘機などが登場したことに加え、F-117自体が高いステルス性を維持するために整備間隔が短く、運用コストがほかの軍用機よりも高い一方、逆に汎用性は劣っていたことなどが影響し、2008(平成20)年4月22日をもって全機退役しています。

 とはいえ、退役後もネバダ州でモスボール保管されたほか、一部の機体は試験や仮想敵役として再び飛んでおり、第一線から退いたとはいえ、その有用性はまだ残っているようです。

 ちなみに、本機は型式記号が「F」であるため、アメリカ軍では戦闘機に分類されていますが、前述のとおり、機上レーダーを装備しておらず、また機体構造の点からも空戦能力はあまり高くないため、実質的には攻撃機として運用され続けました。