32年ぶりとなる新造船が進水した神戸〜高松間の「ジャンボフェリー」。明石海峡大橋と並行する同航路は一時低迷しましたが、いまはむしろ、トラックドライバーにとって、なくてはならない存在になりつつあります。

新造船の“その次”はもっと大きく?

 ジャンボフェリーとしては32年ぶりの新造船となるフェリー「あおい」。2022年5月28日に内海造船瀬戸田工場で進水した同船は、10月の就航に向けて艤装が進められています。瀬戸内海の波をイメージした紺碧色の曲線が大きく描かれた船体は、爽やかなイメージを感じさせます。

 期待の新船であるフェリー「あおい」の特長はなんと言っても、既存船に比べて船体が大型化していることです。

 ジャンボフェリーが現在、神戸〜小豆島〜高松航路に投入している「こんぴら2」と「りつりん2」はいずれも3700総トンですが、建造中の「あおい」はその約1.4倍となる5200総トン。積載能力は大型車換算で現行船の64台から84台に増強され、客室スペースの拡大に伴い旅客定員は475人から620人に増えました。

 ジャンボフェリーの山神正義社長も「物流の需要に対応でき、環境に優しく、コロナ対策も十分にできる船だ」と胸を張ります。

本四架橋があっても、差し迫った危機

 神戸〜高松航路は、本四架橋ルートのひとつ神戸淡路鳴門道と競合し、明石海峡大橋の開通後は低迷しました。そうしたなかジャンボフェリーがより大型の船を導入する背景には、トラックドライバー不足の深刻化に伴って、フェリー航送の需要が大きく伸びていることがあげられます。

 日本のトラック運転者は1995年の98万人をピークに、ドライバーの高齢化や若手の採用難などで減少傾向が続いています。これは全産業平均に比べ賃金が安く、労働時間も長い上、手作業による積卸し作業など、厳しい労働条件が原因だと日本物流団体連合会などは指摘しています。

 2024年には時間外労働の上限規制などを盛り込んだ「働き方改革関連法」が自動車運転業務にも適用されることが決まっており、ドライバー不足に加えて物流コストが上昇することで、国内物流が停滞することが危惧されています。

顧客をつかんできたジャンボフェリーの戦術

 特に四国のトラック事業者は、生産年齢人口の減少に併せてトラックドライバーの人手不足が顕在に。すでに四国から神戸港までの陸上輸送のための人員確保が困難になっている状況に陥っています。2005年には四国だけで約5万人いたトラック運転者は、2030年には3万4000人まで減少すると予想され、国土交通省港湾局は「輸送の生産性が変わらなければ、トラックドライバー不足は深刻化し、輸送需要に対応できなくなる」と危機感を募らせます。

 こうした状況の中、トラックごとに人員を手配する必要がある陸上輸送から、トレーラーシャーシ(車台+コンテナ)とフェリーを活用して大量の荷物を輸送する海上輸送に切り替える荷主が増えています。

 ジャンボフェリーは自社で輸送案件を直接引き受けるドア・ツー・ドアの一貫輸送に積極的に取り組んでいます。これは陸送とフェリーによる無人航送(シャーシ輸送)を組み合わせ、車両リレー方式で貨物を目的地に届けるもので、クループ全体の車両を活用した輸送サービスとなっています。

 同社はアルミウィングシャーシ、平シャーシ、まな板シャーシ、40F(フィート)シャーシ、20Fシャーシなど300本以上を保有。神戸港、高松港、そしてフェリー船内に220Vと440Vの電源設備を完備しました。

 無人航送を行うメリットとして、少ない人数で大量の貨物を運べることがあげられます。無人のシャーシはフェリーに乗せて長距離を輸送する一方、ドライバーはフェリーの寄港地と集配先との間の短い距離を往復するだけで済むため、これまでトラックの台数と輸送距離ごとに増加していた人件費とコストを削減できます。

 国土交通省の資料によると、神戸〜高松間のトラック輸送台数は、2011年は7万2000台(このうち国際フィーダーコンテナ約3万5000TEU)だったのが、2018年には9万2000台(同約5万7000TEU)まで増加。この“トラック”のうち約7割が無人航送のシャーシです。小豆島(坂手港)の利用がメインのバスや乗用車を含めると、年間輸送台数は16万7000台にも達します。

“積み残し”解消なるか

 一方で近年、フェリーが満船のため乗船できない車両が増加。2018年の実績では高松港発で707台、神戸港発で285台の積み残しがありました。

 特に両港を午前1時に出発する第1便と、午前0時に到着する第4便の積み残しが顕著。これは、早朝の市場や工場などの始業開始までに貨物到着を求める荷主や、神戸港コンテナターミナルへの貨物搬入を求める荷主のニーズだとされています。

 こうした事情からジャンボフェリーの大型化が求められ、それが5200総トン型の新造フェリー「あおい」の建造に繋がりました。

「トラックについては現在の1.3倍の台数を積載できる大きさになった。ドライバーが非常に不足している時代なので、フェリーによって無人航送で貨物が輸送できる点は、運送業界、物流業界の皆様にも期待していただける内容だと思っている」(ジャンボフェリー 山神社長)

もう1隻の更新はしばらくお預け さらに大きく!?

「あおい」の就航後、1989年に竣工した「こんぴら2」は引退します。ジャンボフェリーではもう1隻の「りつりん2」(1990年竣工)の後継船も計画していますが、こちらの就航は2025年以降になりそうです。

 それというのも高松港では現在、トラックの海上輸送需要の増加に対応するため、大型フェリーに対応した新岸壁と輸送ターミナルの整備が2025年度までの計画で進められているからです。神戸港でも新港第3・第4突堤間の埋め立て工事が行われており、こちらは宮崎カーフェリーやジャンボフェリーに積載するシャーシ置き場にも活用される予定です。このため新造船の建造については、港側の整備とセットで行う必要があります。

 山神社長は無人航送の増加を念頭に置いた上で「2025年までに建造する2番船は『あおい』と同型だが、規模は少し大きくなる予定」と述べています。

 明石海峡大橋の開通前は4社6隻15便体制で運航していた神戸〜高松航路を運航する船社は、今やジャンボフェリー1社のみとなりました。しかしCO2(二酸化炭素)の削減やドライバーの負担軽減という観点から海上輸送が見直されています。新時代の本四航路の担い手としてフェリー「あおい」の活躍が期待されます。