2018年に運行が始まった西武鉄道の「拝島ライナー」。翌2019年には同じく拝島を通るJR東日本の特急「おうめ」が運行を開始し、通勤ライナーvs特急の構図が出来上がりました。どのような棲み分けがあるか、実際に乗車し見てきました。

混雑区間の着席保証「拝島ライナー」

 首都圏の私鉄では、通勤電車としてもライナー列車としても使えるロング/クロス転換座席の車両を導入し、ラッシュ時間帯を中心に座席指定制のライナー列車を運行する例が増えてきました。そのひとつが2017年に運行を開始した西武池袋線〜地下鉄直通の「S-TRAIN」ですが、同じ車両を用いて西武新宿線・拝島線に登場したのが、「拝島ライナー」です。

 西武鉄道が40000系電車を使用した「拝島ライナー」の運行を2018年に開始すると、翌2019年にはJR東日本も東京〜青梅間に特急「おうめ」を設定。これにより新宿(西武新宿)〜拝島間で競合関係が生まれました。

「拝島ライナー」は西武新宿・高田馬場を出ると、小平までノンストップ。そこから分岐する拝島線内は各駅に停車します。平日の運行本数は、西武新宿発17時15分から22時15分まで、1時間ごとに6本設定。西武新宿駅から拝島駅までの所要時間は47〜49分です。

 同じ時間帯、区間を特別料金不要で利用できる急行は、所要時間54分前後。一見すると、座席指定料金を支払ってまで乗る意味があるのかと思いがちですが、特に混雑する高田馬場〜小平間を300円で着席保証という点から人気を誇っています。なお、運賃との合計金額は740円(きっぷの場合)です。

「おうめ」は「あずさ」などと同じ車両

 一方、中央線と青梅線を経由するJRの「おうめ」の停車駅は、新宿・立川・拝島・河辺・青梅。平日の運行本数は新宿駅基準で18時45分発と22時30分発の2本。所要時間は新宿〜拝島間が44分(1号)、37分(3号)です。停車駅が少ないこともあって、「拝島ライナー」よりも所要時間が短くなっています。

「おうめ」の運行時間帯は中央線から直通する青梅特快がなく、新宿〜拝島間を快速で移動するとおよそ1時間かかるので、速達サービスとしても「おうめ」は機能しています。運賃・料金の合計金額は、普通車指定席1240円(きっぷの場合)です。

 両社の車両を比較してみます。「拝島ライナー」は上述の通りがロング/クロス転換シートの40000系、「おうめ」は長距離特急「あずさ」などでも使われるE353系電車です。どちらの車両にも、トイレや無料Wi-Fi、コンセントなどがついており、高品質のサービスを提供しています。

 総合すると、速達性では「おうめ」、1時間ごとに利用できる利便性や指定料金の安さは「拝島ライナー」に、それぞれ軍配が上がりそうです。

実際に利用してみると…

「拝島ライナー」「おうめ」ともそれぞれに優位性があることは分かりましたが、実際に利用してみるとどうでしょうか。今回、新宿を起点に発車時間帯が近い平日の「拝島ライナー3号」と「おうめ1号」を比べてみました。

「拝島ライナー3号」は18時15分に西武新宿駅を発車。この段階では、座席が3〜4割埋まる程度でしたが、次の高田馬場駅でほぼ満席となりました。次は小平駅に停車。ここでは本川越行きと接続したものの、若干名の降車以上の乗車があり、さらに混雑します。「拝島ライナー」は、拝島線内では乗車券のみで乗れるのです。

 その後は小川駅、東大和市駅で大勢の降車があり、拝島駅へは始発時の3割程度の乗車率で到着しました。

JRの特急「おうめ」はどうか

「おうめ1号」は新宿駅を6〜7割くらいの乗車率で発車。時刻は18時45分です。次の立川駅でまとまった数の乗客が下り、拝島駅へは4〜5割ほどの乗車率でした。拝島駅でも降車客は多く、ここからさらに河辺・青梅の各駅へ向かう乗客は各車両数人でした。降車客の数から推測すると、ささやかながら新宿〜拝島で、西武鉄道とJR東日本の競合関係は発生しているようです。

 とはいえ「おうめ1号」の場合、拝島駅では19時39分発の八高線川越行きに、19時32分発の五日市線武蔵五日市行きにそれぞれ接続しており、両線沿線の利用客も少なからずいることが推測できます。

「拝島ライナー」と「おうめ」は新宿〜拝島間の競合関係もさることながら、「拝島ライナー」はその手前、小川〜武蔵砂川間の利用、「おうめ」は拝島駅を中心として箱根ケ崎や武蔵五日市といった周辺都市への速達列車という側面も大きいようです。両社の列車は終点、または通過点こそ拝島ですが、その拠点以外にもさまざまな目的での利用がなされている列車といえるでしょう。